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実際、過去にはバードストライクによってジェットエンジンが停止し、緊急着陸したケースも報告されています。
そして鳥類による被害に加え、ウサギやシカなどもトラブルをトラブルを引き起こします。
そのような野生動物は滑走路に侵入したり、餌を探したり、穴を掘ったり、巣を作ったり、排泄したりするのです。
こうした問題を解決するために、空港ではさまざまな対策が試みられてきました。
たとえば、ガス砲やスピーカーで大音量を鳴らして威嚇する方法があります。
一定の効果はありますが、動物たちは次第に音に慣れてしまい、再び戻ってくるようになります。
また、鷹やハヤブサなどの猛禽類を訓練して飛ばす「鷹匠」戦術も知られています。
自然な捕食者を使うことで本能的な恐怖を与えることができますが、猛禽類の管理は非常に難しく、常に専門家が必要になります。
さらに、警備犬を滑走路に放つ方法や、ドローンで追い払う技術も登場しましたが、それらも持続性やコスト、天候への依存性といった課題を抱えていました。
そしてここにきて登場したのが、次世代の“動くかかし”とも言える存在、ロボット・コヨーテです。
米陸軍ERDCが開発したこのロボット・コヨーテは、名前の通り「コヨーテ」に似せた外見を持つロボットです。
「ロボット・コヨーテ」の開発は、当初Boston Dynamicsの四足歩行ロボット「Spot」をベースに試験が行われました。
しかし、動物を効果的に威嚇するには速度が不十分であることが判明。より高速で機動性のあるラジコンカーへと転換されました。
現在は、Traxxas社のX-Maxxという四輪駆動車がベースとなっており、最高時速32km/hという素早い動きが可能です。
これにプラスチック製のコヨーテの人形を乗せることで、「動くコヨーテ」に仕立て上げました。
その姿はどこか可愛らしいのに、動物たちにとっては紛れもない天敵。
コストは1台あたり約3000ドル(約44万円)と、軍用装備としては非常に低コストです。
ここで気になるのが、「なぜコヨーテなのか?」という点です。
コヨーテ(学名:Canis latrans)は北アメリカ全域に分布するイヌ科の捕食動物です。
小型の哺乳類や鳥を捕まえて食べることから、多くの動物にとって本能的な「恐怖の対象」となっています。
特にウサギやシカ、地面で採食する鳥類などは、コヨーテの姿を見ると反射的に逃げ出すほどです。
また、縄張り意識が強く、遠吠えで仲間と連携するなど、動物社会に与える心理的影響も大きいと考えられています。
加えて、コヨーテは非常に賢く適応力が高いため、都市部でもしばしば目撃される動物です。
このように、「見ただけで逃げたくなる捕食者」というイメージが、今回の威嚇目的にうってつけだったわけです。
現在のロボット・コヨーテはラジコン操作による手動制御ですが、将来的にはAIによる完全自律運用が目指されています。
設定されたルートを自律的に巡回したり、危険動物をAIが識別して、それに応じた威嚇行動を選択したりするのです。
また、ソーラーパネルや自動充電ステーションによる長期稼働や複数ロボットによる連携行動、群れ戦術も計画されているようです。
こうした機能が搭載されれば、人の手をほとんど借りずに、空港全体の動物管理が可能になるかもしれません。
野生動物を寄せ付けないための「かかし」も、時代と共に進化しているのです。
参考文献
Robot coyotes protect US military airfields with adorable cyber-ferocity
https://newatlas.com/military/robot-coyotes-protect-airfields-adorable-cyber-ferocity/
It all comes down to scare tactics …
https://www.linkedin.com/posts/armyerdc_military-militaryaircraft-aircraft-activity-7327301454241714176-GYkz/
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部