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夏の夜、せっかく眠りにつこうとした瞬間に、あの音が聞こえるだけで全身が緊張し、安眠が台無しになるものです。
そんな私たちの永遠の敵、「蚊」との戦いに終止符を打つ、SF映画のような救世主が現れました。
その名は「Photon Matrix(フォトン・マトリックス)」。
中国・常州の開発者Jim Wong氏が手掛けたこの装置は、LiDARとレーザーという先端技術を用い、空中を飛ぶ蚊をリアルタイムで検出・即座にレーザーで撃墜するという驚きの機能を持っています。
クラウドファンディングサイトIndiegogoで公開されており、すでに多くの支援を集めています。
目次
古くから人類は蚊との戦いを繰り広げてきました。
殺虫剤、蚊取り線香、電気式蚊取り器、そして最近では蚊の動きを検出するAIデバイスまで、さまざまな方法が試されてきました。
しかし、従来の対策にはいくつかの課題が残っています。
殺虫剤は人体への影響が懸念されるほか、屋外では効き目が薄れがちです。
電撃式蚊取り器は蚊以外の昆虫も殺してしまうことがあり、環境への配慮が必要です。
近年普及し始めた追跡型デバイスも、あくまで”位置を示す”だけであり、蚊の処理自体は人間の手に委ねられていました。
そんな中で登場したPhoton Matrixは、蚊をリアルタイムで見つけて即時に撃墜する完全自動型の「蚊追跡・撃退装置」です。
この製品はわずか3ミリ秒で空中を飛ぶ蚊の距離・向き・体長を特定。
そのデータをもとにレーザーを照射して撃墜します。
使用者が何も操作せずとも、蚊が飛び込んだ瞬間に”自動的に処理”されるのが最大の特徴です。
この仕組みにより、「理論上は1秒間に最大30匹の蚊を処理できる」と言われています。
Basicモデルでは90度・3mの範囲を駆除でき、Proモデルでは6mまで対応可能です。
では、実際に蚊がどのように撃ち落とされるか見てみましょう。
Photon Matrixは、まずLiDARで空中の蚊を検出します。
LiDARとは、レーザー光を物体に照射し、その反射時間から距離を測定するセンサーです。
自動運転車などでも用いられるこの技術により、飛行中の蚊の正確な位置と動きがリアルタイムで把握されます。
その後レーザーがピンポイントで動く蚊に照射され、即座に撃墜されます。
この一連の動作に要する時間は、ほんの一瞬です。
ただし、レーザーというと安全性が気になりますよね。
Photon Matrixでは、ミリ波レーダーという別のセンサーが搭載されており、周囲に人間やペットなどの大型の物体がいる場合にはレーザーの発射を停止する安全機構が備えられています。
これにより、誤って人や動物にレーザーが当たる危険を防いでいるのです。
ちなみに、防水性能(IP68)を持ち、屋内外どちらでも使用可能。
暗闇でも問題なく動作します。
電源は家庭用コンセントまたは、オプションのバッテリーパック(8~16時間稼働)から供給されます。
Basicモデルで468ドル(約6万7000円)、Proモデルで629ドル(約9万円)の支援で入手可能です。
現時点ではプロトタイプ段階であり、製品がどの国の安全基準を満たしているのかは明らかではありません。
長期稼働の安定性や目への影響についても、今後の評価が求められます。
実際にどれほど蚊を撃ち落とせるかは謎に包まれているものの、もしかしたらこのアイテムが、「これからの蚊対策はレーザー」と言えるような改革を起こすかもしれません。
参考文献
Laser-wielding device is like an anti-aircraft system for mosquitoes
https://newatlas.com/around-the-home/photon-matrix-laser-mosquitoes/
Worlds First Portable Mosquito Air Defense
https://www.indiegogo.com/projects/worlds-first-portable-mosquito-air-defense#/
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部