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では、どんなものを食べればケトーシスに入れるのでしょうか?
一般的に、ケトジェニック食のカロリー比は、脂肪が70~75%、タンパク質が20%、炭水化物が5~10%程度となっています。
このような食事によって、脂肪の酸化とケトン体の産生を促すことが狙いです。
例えば、ご飯やパン、麺類などの炭水化物は抜いてしまって、代わりに肉・魚・野菜、ナッツ類、チーズ、卵などを増やします。
またケトジェニック食では、砂糖を含むスナックやパン菓子なども完全に抜きます。
研究チームは今回、ケトジェニック食が脳の血流にどのような作用を与えるかを実験しました。
対象となったのは、50〜70歳の認知機能に問題のない健康な成人11人。
彼らは3週間ずつ、通常のバランス食とケトジェニック食を体験し、その効果を比べられました。
各食事期間の終了時には、脳の血流をPETスキャンで測定し、同時に血液検査も実施されました。
研究結果は驚きの連続でした。
まず、ケトジェニック食を3週間続けた被験者は、血液中のケトン体の濃度が、通常食に比べて12倍以上に増加しました。
これはしっかりとケトーシスに入った証拠です。
そして、最も注目すべきは脳の血流量。
なんとケトジェニック食の期間中は、脳全体の血流が平均で22%も増加していたのです。
これは脳への酸素や栄養の供給がそれだけスムーズになっていたことを意味します。
さらに神経細胞の成長や可塑性(柔軟性)を促すタンパク質「BDNF(脳由来神経栄養因子)」の血中濃度も47%増加していました。
このタンパク質は、記憶力や学習能力を支える「脳の肥料」とも言われており、認知症の予防にも関係しています。
これまで、ケトジェニック食はアルツハイマー病や軽度認知障害の人に効果があるとされてきました。
しかし今回の研究では、まったく認知機能に問題のない健康な人においても、脳血流とBDNFが明確に増加することが確認されました。
つまり、ケトジェニック食は「病気の治療食」ではなく、むしろ「脳を最適化する食事法」としての可能性を秘めているのです。
この研究はまだ少人数で短期間の結果ですが、それでも「食事が脳にこれほど強く作用する」ことを改めて示した重要な報告です。
炭水化物を控え、脂質を主なエネルギー源とすることで、脳はより多くの血液を受け取り、より強く活性化される可能性があるのです。
もちろん、ケトジェニック食は万人向けではありません。
医師の監修なく無理に実施することで何らかの問題が起きる可能性もあり、持病や体質によっては合わない人もいます。
しかし脳の健康維持や集中力の向上を目指す人にとっては、選択肢の一つとして注目に値する食事法といえるでしょう。
参考文献
Ketogenic diet raises brain blood flow by 22% and BDNF by 47% in new study
https://www.psypost.org/ketogenic-diet-raises-brain-blood-flow-by-22-and-bdnf-by-47-in-new-study/
元論文
A 3-Week Ketogenic Diet Increases Global Cerebral Blood Flow and Brain-Derived Neurotrophic Factor
https://doi.org/10.1210/clinem/dgaf207
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部