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その直後、参加者たちは2つのグループに分かれ、PlayStation 5の『プレイグ テイル -レクイエム-』というアクション・アドベンチャーゲームをプレイしました。
一方は「暴力的なシーン」、もう一方は「非暴力的なシーン」をプレイするという条件の違いだけで、プレイ時間はどちらも25分程度です。
このとき、チームは参加者の心電図(ECG)で心拍数を計測し、唾液中のコルチゾール(ストレスホルモン)を採取して、さらに主観的な「ストレス感」「リラックス感」もアンケートで記録していきました。
すると、興味深い違いが浮かび上がりました。
暴力的なシーンをプレイしていた参加者たちは、「プレイが進むにつれてストレスを感じた」「あまりリラックスできなかった」と主観的に回答しました。
一方で、非暴力的なシーンをプレイした人たちは、「終わった後にはリラックスしていた」と感じたと答えています。
ところが身体の反応は、まったく異なる“真実”を語っていたのです。
冷水テストの直後、どちらのグループでも心拍数とコルチゾール濃度が大きく上昇していました。
これは、確かに強いストレス状態にあったことを意味します。
しかしゲームプレイ後、この数値はどちらのグループでも明確に低下していたのです。
暴力的なシーンをプレイしていたグループでも、非暴力的なグループでも、身体は明らかにリラックスし、ストレス状態から回復していたことが確認されました。
つまり、プレイヤーが「緊張した」「怖かった」と思っていたとしても、生理的にはストレスが減っていたのです。
研究者たちは、この「主観と生理反応のズレ」に注目しました。
人は自分の感情をゲームの内容や難易度によって判断してしまう傾向があるため、実際の身体の反応とは違った自己評価をしてしまうというのです。
例えば、「このゲームは怖いから、きっとストレスがたまっているはず」と思い込み、それに応じた感情を抱いてしまうこともあるのかもしれません。
しかし、暴力的な内容のゲームであれ、一定時間プレイをすることによって、身体のストレスシステムは回復しようとしている。これはまさに、ゲームがストレス対策の一つになり得ることを示す結果です。
ただし注意点もあります。
この研究で使われたゲームは1作品だけであり、必ずしもすべてのゲームに同じ効果があるとは限りません。
また、過度なゲーム依存や睡眠不足を引き起こすようなプレイスタイルは逆にストレスを悪化させる可能性もあるため、節度が求められます。
「暴力的なゲームなんてストレスがたまるだけ」
今までそう思っていたあなた。
実は心は緊張していても、身体の方はちゃんとリラックスへと向かっているのかもしれません、
参考文献
Video games calm the body after stress, even when players feel on edge
https://www.psypost.org/video-games-calm-the-body-after-stress-even-when-players-feel-on-edge/
元論文
A Plague(d) Tale: Are violent video games effective in reducing stress levels?
https://doi.org/10.1016/j.ijpsycho.2025.112518
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部