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研究の第一ステップでは、35人の参加者に対して、「恋愛アプローチが適切だと思う場所」と「不適切だと思う場所」を自由に挙げてもらいました。
その結果、マッチングアプリ、バー、自宅といった場所から、スーパー、ジム、病院、そしてお葬式まで、じつに多様な回答が集まりました。
次の段階では、さらに162人の別の参加者を対象に、それぞれの場所について「どの程度、恋愛アプローチが適切か」を5段階で評価してもらいました。
その結果、以下の3つのカテゴリーに分類されました。
適切度が高い場所:マッチングアプリ、喫茶店やバー、プライベートな自宅など
適切度が中程度の場所:ジム、オンラインゲーム、道端など
適切度が低い場所:職場、病院、葬儀、教会など
これをもとにチームは、恋愛アプローチする場所が「魅力度」や「親密度」「アプローチの内容」にどれほどの影響を与えるかを調べることにしました。
研究者たちは3つの実験を通じて、「恋愛アプローチが行われる場所」が成功率にどれだけ影響するかを検証することに。
研究1では、まず“アプローチする人の魅力度”を操作しました。
参加者たちは「魅力的な人」あるいは「そうでもない人」からアプローチを受けるという仮想シナリオを読まされ、そのうえで「この誘いを受け入れるかどうか」を評価しました。
すると「魅力的な人」であっても、病院や葬儀といった“不適切な場所”でアプローチをすると、その魅力がほとんど効果を持たなかったのです。
一方で、バーやマッチングアプリなど“適切な場所”でのアプローチでは、魅力度の影響が大きく現れました。
つまり、魅力が武器になるのは、フィールドを間違えなかったときだけだったのです。
研究2では、「アプローチする人が親しい友人か、それとも見知らぬ他人か」という違いを操作しました。
すると親しい相手であっても、不適切な場所でのアプローチはかえってネガティブに受け取られる傾向がありました。
特に女性の参加者は、不適切な場所だと、親しい友人からのアプローチに対して「友情の境界を越えてきた」と感じる可能性が高くなり、受け入れ率が下がる傾向にあったといいます。
研究3では、アプローチの内容そのものを操作しました。
たとえば、「今度、ごはん食べに行かない?」という穏やかな提案と、「今度、家に来ない?」という性的な含みのある提案では、後者が不適切な場面では極端に嫌悪されることがわかりました。
特に女性は「不適切な場」での性的なアプローチに対して非常に敏感に反応し、拒絶率が顕著に高まりました。
男性もまた、不適切な場所でのアプローチに対して否定的になる傾向がありましたが、女性ほど極端ではありませんでした。
この研究の最大の発見は「恋愛アプローチが成功するかどうかは、どこでそれが行われたかに大きく左右される」という点です。
魅力や親しさ、アプローチの内容など、これまで「恋の成功」に重要とされてきた要素は、確かに少なくない影響を与えます。
しかし、それらの条件がどれほど整っていても、アプローチする「場所」が不適切であれば、すべてが水の泡になってしまう可能性があるのです。
たとえば、喫茶店やバーでの誘いは自然でも、病院や葬儀場での誘いは相手にとって不自然に映るかもしれません。
意中の相手に声をかけたいとき、セリフの内容や自分の見た目を整える前に、まず「今ここはアプローチする場所として適切なのか」と自問することが肝心かもしれません。
参考文献
Where you flirt matters: New research shows setting shapes romantic success
https://www.psypost.org/where-you-flirt-matters-new-research-shows-setting-shapes-romantic-success/
元論文
Setting Appropriateness and Romantic Relationship Initiation Success
https://doi.org/10.1177/01461672241235739
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部