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しかし当時は世界的にも翼竜研究が進んでおらず、この標本の正体は長く「種不明」とされてきました。
今回、最新のCTスキャン技術や204種・533項目におよぶ大規模な比較研究によって、ついにその正体が解き明かされたのです。
研究チームは詳細な化石分析から、御船層群で発見された頸椎骨が「翼竜の第6頸椎骨」であることを突き止めました。
この骨には、後関節突起の独特な稜や椎体底部の溝、三角形の関節面など4つの特徴的な形状が確認されました。
これらの特徴が他のどの翼竜とも異なることから、アズダルコ科の新属・新種と認定され、「ニッポノプテルス・ミフネンシス(Nipponopterus mifunensis)」と命名されました。
この学名は「日本の翼竜(Nippon + pterus)」と「御船産(mifunensis)」を意味しています。
日本から新種の翼竜が記載されるのは初めての快挙です。
さらに比較解析の結果、この翼竜は後期白亜紀に北米で生息し、同じアズダルコ科に属していた巨大翼竜「ケツァルコアトルス」の系統に属することが明らかになりました。
今回の新種標本は、アズダルコ科の中でも最古級のものにあたり、日本産の翼竜としては画期的な発見です。
国内では依然として翼竜の化石記録が非常に限られており、御船層群のさらなる調査が期待されています。
今後もより完全な骨格標本や、他の部位の発見によって、日本の空を飛んでいた翼竜たちの生態が明らかになることが望まれます。
今回の「ニッポノプテルス・ミフネンシス」の発見は、日本の古生物学史における大きな一歩です。
化石発見が困難とされてきた日本の翼竜研究に、新たな希望をもたらしました。
参考文献
日本初、翼竜類の新属新種命名
https://www.kumamoto-u.ac.jp/whatsnew/sizen/release20250513
元論文
Reassessment of an azhdarchid pterosaur specimen from the Mifune Group, Upper Cretaceous of Japan
https://doi.org/10.1016/j.cretres.2024.106046
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部