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しかし今回の研究では、フラミンゴがはるかに高度な「能動的捕食者」であることがわかりました。
研究チームは3Dプリンタで作った足やくちばしのモデル、計算流体力学シミュレーション、実際の生きたフラミンゴや、彼らが捕食するブラインシュリンプ(Artemia)を使った実験を組み合わせて詳細に分析しました。
その結果、フラミンゴは単に泥水を濾過するだけでなく、自ら水中に流れや渦を発生させて獲物を効率的に吸い上げていることが確認されたのです。
フラミンゴの“竜巻ハント”のプロセスはこうです。
まず足踏みで湖底の泥をかき回し、ブラインシュリンプやカイアシ類などの微小な甲殻類を巻き上げます。
また柔らかく変形する水かき足が特に効果的で、これを水平に前に出すことで、カルマン渦のような強い水流と渦を作り出します。
こちらはフラミンゴが発生させたカルマン渦によく似た水流。
次に、水中につけた頭を約40cm/秒の速度で素早く引き上げることで、縦方向のトルネードのような強い渦を発生させ、それによって巻き上げた底の粒子や小生物を吸い込んでいたのです。
さらに、フラミンゴ独特のL字型のくちばしが水中で“チャタリング(素早い開閉運動)”と呼ばれる動きをします。
この動きにより、毎秒約12回の高速開閉が起こり、約7cm/秒の垂直流が発生します。
この流れは獲物をくちばしの内側に吸い寄せる役割を果たし、3Dプリンタで作ったモデルを使った実験ではブラインシュリンプの捕獲率を約7倍も向上させました。
またフラミンゴのくちばしの形状は、水につけると水面と水平になるので、竜巻で巻き上げられた獲物が自然と口の中に入るようになっていました。
このようにフラミンゴは、足・首・くちばしをフル活用して自らの周囲に流体力学的な“トラップ”を作り、微小で敏捷な獲物を巧みに捕まえていたのです。
こちらは3Dプリンタで作ったくちばしを使って水流が発生する際の様子。
今回の研究は、フラミンゴが単なる濾過摂食動物ではなく、能動的な捕食者であることを世界で初めて実証しました。
この知見はマイクロプラスチック除去フィルターや水中ロボット設計などの技術にも応用できる可能性があります。
次に動物園でフラミンゴを見かけたら、その静かな水面の下で繰り広げられている“水中竜巻ハント”に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
参考文献
Flamingos create water tornados to trap their prey
https://news.berkeley.edu/2025/05/12/flamingos-create-water-tornados-to-trap-their-prey/
元論文
Flamingos use their L-shaped beak and morphing feet to induce vortical traps for prey capture
https://doi.org/10.1073/pnas.2503495122
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部