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このキャンペーンは「行動する」「つながる」「打ち込む」という3つの柱で、誰もが日常の中で簡単に心の健康を保つ行動ができるよう呼びかけています。
しかし、これまでABC運動で進められているような日常の行動が、具体的にどのように人々のメンタルヘルスに影響してきたかは科学的には明確ではありませんでした。
そこで研究チームは、ABC運動に参加した成人603名(平均年齢49.4歳、男女比ほぼ同等)に電話インタビュー調査を行い、「15種類の日常行動」の頻度と心の健康度(Warwick Edinburgh Mental Well-being Scale:WEMWBSスコア)との関連を徹底的に分析しました。
調査対象となった15種類の日常行動とは以下の通りです。
では、どんな結果になったでしょうか。
調査の結果、ABC運動参加者全体の92.9%が「心理的ストレスなし」と回答し、WEMWBSスコアの平均は52.6点と比較的高めでした。
そして特に15の行動のうち9つがメンタルヘルスの改善と強く関連していることが分かりました。
中でも最も効果が高かったのは「他の人と会話する」ことでした。
この行動を日常的に行っていた人は、ほとんど話さなかった人に比べてWEMWBSスコアが10.0ポイントも高かったのです。
これは他の行動と比べても突出した効果です。
次いで「自然の中で過ごす」(+5.1ポイント)、「友人・同僚との定期的な交流」(+4.8ポイント)、「身体活動」(+4.3ポイント)、「スピリチュアル活動」(+3.9ポイント)、「読書やパズルなどの集中活動」(+3.8ポイント)、「家族との交流」(+3.7ポイント)も高い効果を示しました。
この結果は、心の健康において「人とのつながり」がどれだけ重要かを示しています。
研究チームは「人は本能的に他者とのつながりを必要としており、会話は心理的安全や安心感を提供する」と分析しています。
また外に出る、体を動かすといった行動も脳内の神経伝達物質(ドーパミンやセロトニン)を活性化させる効果が知られており、これが気分改善につながったと考えられます。
この研究は私たちの日常生活にも多くの示唆を与えてくれます。
大切なのは「特別なことをしなくても良い」という点です。
誰かに話しかける、近所の公園を散歩する、家族や友人と連絡を取るなど、すぐにできる行動が心の健康を守る“鍵”になるのです。
ストレスや不安を感じた時こそ、ぜひこの研究結果を思い出してみてください。
チャットでも構いません。”誰かと喋る”ようにするのです。
参考文献
Best ways to boost mental well-being are free and easy to do, study finds
https://newatlas.com/health-wellbeing/mental-well-being-everyday-activities/
Everyday actions and behaviours linked to better mental well-being: study
https://www.curtin.edu.au/news/media-release/everyday-actions-and-behaviours-linked-to-better-mental-well-being-study/
元論文
The association between participation in mental health protective behaviours and mental well-being: cross sectional survey among Western Australian adults
https://doi.org/10.1016/j.ssmmh.2025.100441
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部