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ハワイ固有の蛾Hyposmocoma属に含まれるそのイモムシは、「ボーンコレクター(bone collector)」と呼ばれており、クモと共生し、クモの巣に捕らえられた獲物を食べるという独特の行動を見せるのです。
このユニークな種は、ハワイのオアフ島の山腹でのみ発見されており、樹洞や岩の割れ目に張られたクモの巣だけに生息しています。
ボーンコレクターの個体が野外で確認されたのは、これまで僅か62匹だけです。
そして今回、ハワイ大学マノア校の研究チームは、この貴重な野生のボーンコレクターを観察し、その行動を報告することができました。
通常、クモの巣に入り込む小さな生物は、クモのターゲットになってしまいます。
しかし、ボーンコレクターは巧妙かつ恐ろしい方法で、クモの目を欺いていると分かりました。
ボーンコレクターと呼ばれる小さなイモムシは、クモの巣に潜り込むと、クモの巣に捕らえらえた獲物を食べます。
死んでいる昆虫や衰弱した昆虫を喜んで食べるのです。
獲物がクモの糸で包まれているとしても、ボーンコレクターはその包みさえも噛み解いて中身を食べることができます。
では、そのようにしてクモの獲物を横取りする彼ら自身は、クモのターゲットにならないのでしょうか。
なんと彼らは自らの体に他の昆虫の死骸をまとうことで、クモの目を欺くのです。
まさに「ボーンコレクター(骨収集家)」というわけです。
彼らは、クモの脱皮した体の一部や、昆虫の死骸の食べられない部位を慎重に選び出し、サイズをカットして自分の体に貼り付けます。
研究者たちが行った実験によると、ボーンコレクターたちは、小枝や葉、樹皮などが近くにあってもそれらを避け、昆虫の破片だけを集める傾向がありました。
彼らは意図的に死骸を集め、死骸で身を隠しているのです。
そしてその効果は非常に高く、クモの目を欺くカモフラージュになっています。
研究チームは、「この幼虫がクモに捕食されたり、クモの糸に包まれたりしている様子が発見されたことは一度もない」と述べています。
ボーンコレクターのこうしたユニークな行動はただでさえ私たちの興味を引き付けますが、観察ではより驚きの事実が分かりました。
それは、このイモムシたちがハワイ原産ではない数種のクモたちとこのような方法で共存しているということです。
つまり彼らは死骸をまとうことで、外来種に適応できているのです。
とはいえ、ボーンコレクターの存在が非常に稀であることを考えると、彼らが絶滅の危機に瀕していることは言うまでもありません。
研究チームも「保護活動がなければ、こうした貴重な種の最後の生き残りが消えてしまう可能性が高い」としています。
参考文献
‘Bone Collector’Caterpillar Wears Dead Bugs to Steal Prey From Spiders
https://www.sciencealert.com/bone-collector-caterpillar-wears-dead-bugs-to-steal-prey-from-spiders
Carnivorous “bone collector” caterpillar patrols spiderwebs while adorned in body parts of its insect prey
https://www.eurekalert.org/news-releases/1081118?
元論文
Hawaiian caterpillar patrols spiderwebs camouflaged in insect prey’s body parts
https://doi.org/10.1126/science.ads4243
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部