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しかし一方で、順番の影響は必ずしも一方向ではない(順番が後の方ほど有利ではない)という指摘もありました。
特に、競争率が低い場合や複数の合格枠がある場合には、早めの出場者が有利になる可能性も考えられていました。
ただし、これまでこのテーマが大規模なデータで検証された例はなく、特にお笑いコンテストという独特な環境での研究は初めてでした。
研究チームは今回、NHKの人気番組「爆笑オンエアバトル」に注目しました。
この番組では、10組の若手お笑い芸人がくじ引きで順番を決め、審査員100人がそれぞれ合否を判定します。
合格できるのは10組中5組と、競争率は比較的低め(=合格率が高め)です。
つまり、必ずしも”一番面白い”必要はなく、”そこそこの評価を受ければ”合格できるルールになっていました。
チームは1999年から2014年までの約500回分のコンテストデータを収集・分析しています。
すると驚くべき結果が明らかになりました。
1番手の演者は、他の順番の演者と比べて5%〜10%も得票率が高かったのです。
つまり、爆笑オンエアバトルにおいては”トップバッターが最も有利”になっていました。
ただし、これは10組中5組の合格者を決めるという競争率の低い環境が大きく影響しているとチームは指摘します。
先ほど説明したカリブレーション効果によると、トップバッターは評価の基準となるように、平均的な中間評価を受ける傾向があるのでした。
要するに、高得点は出しづらい一方で、極端に低い得点もつけられにくいわけです。
中間評価をもらえるなら、10組中5組が合格という競争率の低い条件では、むしろトップバッターほど合格に近づきやすいシステムになっていたのです。
もし競争率がもっと高く、「勝者一人を決める」ようなコンテストなら、話は違うでしょう。
その場合、平均点では埋もれてしまい、1番手が不利になる可能性が高まります。
「今回の研究結果は単なるお笑いコンテストの話にとどまらない」とチームは話します。
ビジネスプレゼンテーションやスポーツ競技、学校の発表会など、順番が審査に影響する場面は私たちの生活のあらゆる場に存在するからです。
競争率が低い場合なら、あえてトップバッターを志願する方が勝つ確率は高まるかもしれません。
参考文献
お笑いコンテスト番組のデータから判明! 競争率が低い場合は1番手が最も有利
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-17515.html
元論文
Is it advantageous to be first? Evidence from a TV comedy program
https://doi.org/10.1016/j.jebo.2025.107009
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部