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当時のカラル文明は、農業だけでなく漁業や交易にも積極的で、周辺地域との文化交流も盛んだったと考えられています。
その中でも聖地アスペロは、沿岸部に位置する漁業と交易の拠点として重要な役割を果たしていました。
今回発見された女性は、まさにそのカラル文明が栄えていた時代に生きた人物とみられています。
彼女の遺体は、植物繊維の束や綿の布、網などで丁寧に包まれた状態で保存されており、遺跡の発掘チームにとって大きな驚きとなりました。
この女性がエリートだったと推定される理由は、彼女とともに埋葬されていた数々の副葬品にあります。
墓からはコンゴウインコの羽で刺繍されたパネルや、緑と茶色のビーズをあしらったオオハシのクチバシ、アマゾン地域産の巻き貝、30個ものサツマイモ、そして漁網などが発見されました。
これらの副葬品は、当時すでに広範な交易ネットワークが存在していたこと、そして彼女がそれに関与できるほど高い社会的地位を持っていたことを示しています。
さらに特筆すべきなのは、遺体の保存状態です。
この地域では通常、乾燥した気候の影響で骨だけが残ることがほとんどですが、今回発見された女性は皮膚、髪、爪までもが極めて良好に保存されていました。
これにより、当時の葬送儀礼において、特別な保存措置が取られた可能性が指摘されています。
これらの点から見ても、彼女が一般の人々とは一線を画す存在だったことは明らかです。
またカラル文明では、男性だけでなく女性も高い地位に就くことができたという事例が、近年の発掘調査で次々に明らかになってきています。
今回の発見は、その流れを裏付ける貴重な証拠のひとつとなりました。
5000年も前の女性のミイラが、今私たちの目の前に姿を現すのは驚くべきことです。
このエリート女性の遺体分析を含めた更なる調査で、歴史の闇に埋もれたペルーの背景が浮かび上がるかもしれません。
参考文献
5,000-year-old burial of elite woman with inlaid toucan’s beak found in Peru
https://www.livescience.com/archaeology/5-000-year-old-burial-of-elite-woman-with-inlaid-toucans-beak-found-in-peru
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部