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これまでの研究では、ペット所有とストレス軽減や社会的孤立の緩和、さらには心血管疾患リスクの低下など、健康面と幸福度における相関関係が多く示されてきました。
しかしこれらの相関は未解明な部分も多く、「ペットを飼うから幸せなのか」「もともと幸福な人がペットを飼うのか」といった議論もなされてきました。
そこでケント大学の研究チームは、英国における大規模なパネル調査「UK Household Longitudinal Study(UKHLS)」を用い、約2600世帯にわたる調査データ(2010年~2024年までの追跡データ)を分析しました。
人生満足度(1~7点)、ビッグ5性格特性(開放性・誠実性・外向性・協調性・神経症傾向)、および犬・猫などのペット所有状況を詳細に収集し、それらの関係性を明らかにしたのです。
では、ペットを飼うことは人生満足度にどの程度の影響を及ぼしていたのでしょうか。
分析の結果、ペットを飼うことで人生満足度は平均3.74ポイント向上することが示されました。
人生満足度1~7点の尺度で約3~4ポイント上昇することを考えると、ペットを飼うことがいかに大きな影響を及ぼしているかが分かります。
さらに、この満足度向上を金銭価値に換算すると、年間約7万ポンド(約1,324万円)に相当することが分かりました。
この金額は、結婚や親しい友人・親族との定期的な会合で得られる幸福度とほぼ同等です。
また、性格特性との関連も明らかになりました。
猫を好む人は「開放性」が高く、犬を好む人は「外向性」と「協調性」が高く、「神経症傾向」が低い傾向が見られました。
しかし性格特性を統制した後でも、ペット所有の幸福効果は消えず、万人に共通するメリットであることが示されています。
今回の研究結果は、ペットを単なる愛玩動物ではなく、心身の健康を支える“無形の資産”として再評価すべきことを示しています。
実際、ドイツではその点を評価し、ペット可賃貸物件の割合拡大や、アメリカの高齢者施設におけるセラピードッグ導入などを行っています。
これらを参考に日本でもペット可住宅の整備や高齢者施設でのペット同伴プログラムを推進するなら、国民全体の幸福度が向上するかもしれません。
忙しさに追われる現代人にとって、愛するペットとの穏やかな時間こそが、本当の豊かさを教えてくれるのかもしれません。
参考文献
New study proves pets increase human life satisfaction and wellbeing Olivia Miller
https://www.kent.ac.uk/news/health-social-care-and-wellbeing/36435/new-study-proves-pets-increase-human-life-satisfaction-and-wellbeing
元論文
The Value of Pets: The Quantifiable Impact of Pets on Life Satisfaction
https://doi.org/10.1007/s11205-025-03574-1
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部