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指定された保護区は、伊豆・小笠原海溝、中マリアナ海嶺と西マリアナ海嶺、西七島海嶺、マリアナ海溝北部の4つの海域にまたがります。
これらは水深2000メートルを超える深海底に広がる領域であり、特殊な技術や設備がなければ調査が難しい場所です。
そこでJAMSTECのチームは、さまざまな調査船や無人探査機を使用して、大規模な深海モニタリングを実施。
その結果、深海には驚きの世界が広がっていたのです。
モニタリング調査の成果は、まさに驚くべきものでした。
JAMSTECのチームは、調査航海5回、計58日間にわたる調査を通じて、500種以上の生物を確認し、そのうち15種が新種であることを突き止めたのです。
これら新種は、刺胞動物門、紐形動物門、環形動物門、節足動物門、棘皮動物門に属しており、特に節足動物の新種が多く確認されました。
新種が発見された水深は400~3623メートルに及び、特に西七島海嶺では10種もの新種が見つかりました。
こちらが新種たちの写真。
さらに調査の中で特に注目されたのは、推定7000歳を超えるとされるツノサンゴが見つかったことです。
西マリアナ海嶺の水深525メートル地点で発見されたこのツノサンゴの群体は、高さ約308センチメートル、幅441センチメートル、基部の直径28センチメートルにも達していました。
成長速度から計算すると、7000年もの歳月をかけて育ったと推定され、地球上で最も長寿な生物のひとつである可能性が示唆されています。
それから西七島海嶺では、深海域のトップ・プレデター(頂点捕食者)であり、希少種として知られる「ヨコヅナイワシ」(最大全長は253センチメートルにもなる)も確認されました。
ヨコヅナイワシは水深2000メートルを超える深海に棲む硬骨魚類として世界最大級であり、その生態には今なお謎が多く、今後の研究が期待されています。
今回の調査で、沖合海底自然環境保全地域が健全な状態を維持していることが確認され、保護区指定の意義が改めて浮き彫りになりました。
一方で、深海生物の多様性についてはまだ十分に解明されておらず、今後も引き続き調査とモニタリングを続けることが求められます。
地球最後のフロンティアとも言われる深海。そこにはまだ、私たちの想像を超える命の営みが広がっています。
そして、それを知ることが、未来の地球を守る大きな一歩となるのです。
参考文献
沖合深海底の海洋保護区から15種の新種を発見
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20250417/
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部