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ところが近年の研究では、社会的疎外感が強くても、高い幸福度(ウェルビーイング)を維持できている人たちが一定数存在することがわかってきました。
ここで登場するのが、ウェルビーイングという概念です。
これは単に幸せや気分が良いという状態にとどまらず、人生に満足し、自分の存在価値を実感しながら前向きに生きている状態を指します。
では、このウェルビーイングを保っている人たちは、何を心の支えにしているのでしょうか。
近年注目されているのが、ペットとの関係がもたらす心理的な効果です。
ペットは家族であり、時に親友でもあります。
その存在が、私たちの心にどんな影響を与えているのでしょうか。
今回の研究では、社会的疎外感が高い人の中でも、ウェルビーイングが高い人と低い人の違いはどこにあるのかを明らかにするために、特に若者に焦点を当て、ペットとの関係性(態度や愛着)を分析しました。
研究では、高校生・大学生2,845名(男性753名、女性2092名)を対象にオンラインアンケート調査が実施されました。
質問項目には、社会的疎外感(CEI尺度)や、幸福度(WHO-5尺度)、ペットへの愛着などが含まれていました。
特に注目されたのは、社会的疎外感が高い学生のうち、幸福度が高いグループと、幸福度が低いグループとの違いです。
結果として、疎外感があっても幸福度の高いグループでは、環境や野生動物に対して人間中心的な考えを持っており、生態・環境への関心が高いことが分かりました。
またペットへの親密な愛着が深く、相談相手として接していることが明らかになりました。
彼らはペットに対して大事なことを話したり、心のうちを打ち明けたりしていました。
つまり幸福度の高い若者は、イヌやネコを自分の投影あるいは延長(人間中心的と言える)として扱ったり、大切な家族として扱ったりして、強い心理的つながりを持っていたのです。
一方、幸福度が低いグループでは、ペットとのつながりが浅く、また動物に対する関心も限定的でした。
この違いは、ペットとの親密な関係が社会的疎外感を和らげることを示しています。
一緒に生活する動物を単に「ペット」と見るのではなく、無条件で受け入れてくれる「家族」「親友」と見なすなら、その関係が感情の避難所となり、心の安定剤となる可能性があるのです。
それでもし、「居場所がない」と感じているなら、ペットを愛し、話しかけてみるのもよいかもしれません。
ペットは何も言わなくても、あなたの存在そのものを受け入れてくれます。
人間関係に疲れたときこそ、あなたのそばのもふもふが、心のセラピストになってくれるかもしれません。
参考文献
プレスリリース:社会的疎外感を抱えつつもウェルビーイングが高い人は、 イヌやネコに心のうちを打ち明けている
https://www.azabu-u.ac.jp/topics/2025/0415_45802.html
元論文
Study on adolescents’ attitudes and attachment toward companion animals: mitigating the negative effects of cultural estrangement on wellbeing
https://doi.org/10.3389/fpsyg.2025.1552127
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部