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研究主任のレザ・ノスラティ(Reza Nosrati)氏はこう説明します。
「まっすぐな輪ゴムをねじって螺旋状にしたところを想像してください。そこにさらにもうひとひねり加えると、超螺旋(スーパーヘリックス)と呼ばれる、より強く巻かれた構造になります。
精子にとっては、この液体の超螺旋的な”ひねり”が運動を強化し、精子に追随するように渦が収束していくことで、より効率よく泳ぐことを可能にしていたのです」
この運動の中心にあるのが、精子の鞭毛です。
ムチのようにしなりながら動くこの尾が、精子を前へと押し進めています。
鞭毛の動きによって周囲の体液に渦が生まれ、コルク抜きのようにねじれた流れが、精子の後ろや周囲に形成されていました。
この研究は、精子の運動性に関する理解を大きく前進させるものです。
これまでの研究では、主に液体の表面近くでの精子の動きが調査されてきましたが、より詳しい鞭毛の動きと、それを取り巻く3次元的な流体の流れ場の両方を同時に可視化したのは、今回が世界初の成果だといいます。
また今回の研究対象はヒトの精子でしたが、その知見は生殖分野を超えて、多くの分野に応用可能です。
この発見は、微生物学や流体力学の新たな研究領域を開くものでもあります。
たとえば、バクテリアのような“微小なスイマー”がどのように移動し、表面に付着するのかといったことを理解することで、感染の経路やバイオフィルム(細菌の集合体)形成の研究に貢献することが期待されます。
「こうしたビジュアル化によって、精子や他の微生物がどのようにさまざまな流体環境を進み、動いていくのか、流体力学的な理解が大きく深まるのです」とノスラティ氏は語っています。
参考文献
Sperm don’t just swim, they screw their way forward
https://phys.org/news/2025-04-sperm-dont.html
Sperm use corkscrew-like fluid flows to screw through their path to fertilization
https://interestingengineering.com/health/sperm-use-cockscrew-movement-to-move-forward?group=test_a
元論文
Superhelix flow structures drive sperm locomotion
https://doi.org/10.1016/j.xcrp.2025.102524
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部