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これは個人が自発的にひとりの時間を選択し、その時間を自己反省、創造的活動、リラクゼーションなど、自己充実のために有意義に活用する状態を指します。
現在では心理学者の多くも「このタイプの孤独にはメリットがあり、孤独が必ずしも否定的なものではなく、適切に活用されれば精神的健康や生活の質の向上に寄与する可能性がある」と述べています。
ポジティブな孤独には具体的に、次のような効果が先行研究によって認められています。
1. 自己発見と自己成長:一人の時間を通じて自己理解を深め、個人的な成長が促進される
2. 創造性の向上:外部の干渉がない環境で思考や活動に集中でき、創造的なアイデアが生まれやすくなる。
3. リラクゼーションと再充電:日常生活のストレスから解放され、心身のリフレッシュを図ることができる。
4. 精神的な安定:ひとりの時間の中で瞑想や祈りなどを行うことで、内面的な平和や精神的な安定を高められる。
このようにポジティブな孤独は、自分の心の内側に向かうことで、精神的な安定を求めたり、集中力や思考力を高めることができるのです。
その一方で、ひとりになる仕方には注意点もあります。
ひとりでスマホを見ている時間も「ポジティブな孤独」に含まれるのでしょうか?
残念ながら、答えは「ノー」です。
2024年に行われた全米調査では、56%の人が「ひとりの時間はメンタルヘルスに必要」と答えた一方で、そのほとんどの人がが「ひとりの時間」をスマートフォンやSNSに費やしているという現実もあります。
心理学者によると、SNSを見ている間は実は「本当の意味でひとりになっていない」といいます。
SNSは社会的な刺激に満ちており、他人と比べたり、無意識のうちに気を使ったりして、かえって心が疲弊してしまうことがあるのです。
ソーシャルメディア中心の孤独は、むしろ不安や自己評価の低下を引き起こす危険があります。
とくに若年層では、現実の対面交流を避け、バーチャルな世界に閉じこもる傾向が強まっており、これが心理的ストレスの増加と関連していることがわかっています。
ひとりになるポイントは、物理的にひとりになれば何でもいいのではなく、「自分自身とつながる時間」があるかどうかです。
ポジティブな孤独とは、画面ではなく内面に目を向ける時間です。
たとえば、散歩しながら考え事をしたり、ノートに思いを書き出したり、静かな場所でぼんやりする時間もその一つとなるでしょう。
最近、人間関係に疲れて心が不安定になっているという方は、思い切ってまとまった時間を取り、SNSとも一時的に距離を置いて、自分と対話してみるといいかもしれません。
参考文献
Being alone has its benefits − a psychologist flips the script on the ‘loneliness epidemic’
https://theconversation.com/being-alone-has-its-benefits-a-psychologist-flips-the-script-on-the-loneliness-epidemic-250742
元論文
The Definition and Categories of Positive Solitude: Older and Younger Adults’ Perspectives on Spending Time by Themselves
https://doi.org/10.1177/0091415020957379
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部