- 週間ランキング
その一方、これまでの研究で、アクション系のゲームが視覚注意や空間認識の向上に寄与することが報告された例があります。
アクションゲームはしばしば、空間的な探索やナビゲーション、素早いタイミングの調整を必要とするため、定期的なプレイ習慣が脳の視覚処理能力を高める可能性があると考えられているのです。
しかしそれが脳のどこに、どう影響しているのかというメカニズムまでは、長らく明らかではありませんでした。
そこで研究チームは今回、アクションゲームのプレイヤーとゲームをほとんどしない人の脳を比べて、視覚処理能力がどのように異なるかを調べました。
チームは、アクションゲームを週5時間以上、延べ2年以上プレイしているゲーマー28人(男性24人・女性4人)と、ほとんどゲームをしない非ゲーマー19人(男性7人・女性12人)を対象に調査を行いました。
主にプレイされていたアクションゲームの種類は、一人称視点シューティングゲーム、リアルタイムストラテジー、マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ、およびバトルロイヤル形式でした。
調査では、全員が同じ視覚処理に関するタスク(動いている点の集合の中から全体としての動きの方向を判断するタスク)に取り組んでいる最中の脳活動をMRIを用いて解析しました。
その結果、アクションゲームのプレイヤーは、非ゲーマーに比べ、背側経路において機能的および構造的な結合が強化されていることが判明したのです。
これは先ほど言ったように先ほど言ったように、物の位置や動きなどの空間的情報を処理し、「どこにあるか」「どう動くか」を判断する役割をもつ経路です。
そして、その脳構造の違いはタスクの結果にもちゃんと現れていました。
背側経路がより強く結びついているゲーマーほど、動く対象にすばやく反応できたのです。
これはアクションゲームを習慣的にプレイすることによって、物の動きを「見る力」や「反応力」を高められることを示唆しています。
単なる娯楽の遊びとして楽しんでいたゲームが、いつの間にか脳を鍛えるトレーニングになっている可能性があるのです。
これらを踏まえてチームは、アクションゲームが今後の教育やリハビリ、あるいはスポーツトレーニングなどに応用できるかもしれないと期待しています。
参考文献
Action video gamers have enhanced functional and structural connectivity in the dorsal visual stream
https://www.psypost.org/action-video-gamers-have-enhanced-functional-and-structural-connectivity-in-the-dorsal-visual-stream/
元論文
Connectivity in the Dorsal Visual Stream Is Enhanced in Action Video Game Players
https://doi.org/10.3390/brainsci14121206
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部