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研究チームは今回、オンライン上で166人のフルタイム労働者を対象に実験を行いました。
参加者は最初に、自分にとって理想的な音楽の特性(音量、テンポ、複雑さ、感情的強度)を評価します。
その後、異なるプレイリスト(明るく活発なポップス/落ち着いたスローテンポ曲)を聴きながら創造性を問う課題に取り組みました。
結果として、自分のニーズと一致しない音楽を聴いていたグループは、ポジティブな感情が減少し、精神的・認知的な疲労感が強くなっていることがわかりました。
つまり「自分に合わない音楽」は、気分を沈ませ、集中力を奪うのです。
さらに2つ目の調査では、実際に音楽が流れる職場(医療機関、小売店、食堂など)で働く68人を対象に、3週間にわたる日記調査が行われました。
参加者は毎日3回、音楽の印象・気分・集中状態・職場での行動などを報告しました。
その結果、「音楽が自分に合っていない」と感じた日には、仕事のペースが遅くなったり、職場への不満を同僚に話したり、備品をこっそり持ち出したりといった、会社にとってマイナスの行動が増えていたのです。
一方で、同僚を自発的に助けるようなプラスの行動は減少していました。
つまり音楽の選び方一つで、職場の雰囲気や生産性は大きく変わるのです。
この結果を受けて、研究チームは「職場のBGMを選ぶ際には、顧客の好みだけでなく、従業員のニーズにも配慮する必要がある」と提言しています。
特に、在宅ワークなら個々人に合うBGMをかけることができますが、職場で働く従業員は自分の一存でBGMを勝手に変えたり、止めたりすることはできません。
そこで研究チームは具体策の一例として、休憩中に音楽から逃れられる静かなスペースを設けたり、音楽を遮断できるノイズキャンセリングイヤホンの導入を検討するといいのではないか、と述べています。
さらに業務に支障がない範囲で、それぞれの従業員が自分の好きなBGMを聴けるようにすることで、満足度や生産性の向上も期待できるとしています。
「音楽」は上手に使えばやる気を高める強力なツールですが、使い方を間違えれば、疲労やストレスの原因にもなりかねないのです。
参考文献
Background music: When the wrong tune drains workplace energy and focus
https://phys.org/news/2025-04-background-music-wrong-tune-workplace.html
元論文
n sync or out of tune? The effects of workplace music misfit on employees.
https://doi.org/10.1037/apl0001278
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部