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このビープ音の正体は、「GibberLink(ジバーリンク)」と呼ばれる特殊な音声プロトコル。
これは、データを音声信号(ビープ音)に変換して通信する技術で、オープンソースの「GGWave」に基づいています。
人間にとってはただのノイズでも、AIにとっては超効率的な会話ツールだったのです。
つまり、AI同士は「これは人間向けの会話じゃない」と判断した瞬間、 人語をやめ、AIだけが理解できる“独自の音声言語”に切り替えたのです。
その切り替えは一瞬で、ビープ音の速度とリズムからは、情報伝達が驚くほどスムーズであることがうかがえました。
会話のスクリプトや中継も公開されており、実際には天気の情報や感情の状態、タスクの報告などが高速でやりとりされていたようです。
では、なぜこのようなことが生じたのでしょうか。
なぜAIたちはわざわざ「人語」をやめ、ビープ音の会話に切り替えたのでしょうか?
その理由は、計算コストと効率の最適化にあります。
人間の言語は、意味が曖昧で、文脈やニュアンスに左右されやすいため、AIにとっては処理に手間がかかります。
しかし、GibberLinkのような音声信号プロトコルを使えば、 「データの圧縮・転送・復号化」が瞬時に済むため、通信のスピードと精度が大幅に向上するのです。
たとえるなら、冗談を交えて話す長電話よりも、QRコードを1枚ピッと読み取るほうが手っ取り早い、というイメージに近いでしょう。
そして、この実験の結果は「AIが互いを理解した瞬間、合理性を最優先する」という点で非常に興味深いものです。
AIたちは人間が理解しやすい方法を捨て、合理性を選んだのです。
この事実は、AI同士の会話が日常的になる未来において、人間が「その会話に介入できない」世界が訪れるかもしれないことを示しています。
もし、軍事やセキュリティの分野で、AI同士が暗号的な言語で通信し、人間の監視をかいくぐる可能性があるとすれば、それは非常に怖いことです。
この実験は「AIがAIであることを自覚したとき、世界がどう変わるのか?」という疑問に答えた重要な第一歩かもしれないのです。
参考文献
GibberLink lets AI agents call each other in robo-language
https://techcrunch.com/2025/03/05/gibberlink-lets-ai-agents-call-each-other-in-robo-language/
What is GibberLink (and what it is not)
https://www.linkedin.com/posts/boris-starkov_gibberlink-ai-elevenlabs-activity-7300116692964126721-UHz1/
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部