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このように色は様々な印象や連想を私たちに与えていますが、研究チームは今回、特に赤色が人々の知覚にどのような影響を与えるのかをより詳しく知りたいと考えました。
あらゆる色の中でも赤色は人々に強い印象を与える刺激色であり、興奮や警戒などとよく関連づけられたり、食欲をそそる色とされています。
この特性をうまく利用しているのがマクドナルドであり、マクドナルドは看板を赤色にすることで食欲をそそったり、店舗に立ち寄ってもらうよう人々の無意識に働きかけているのです。
そこでチームは、赤色が人々の行動や判断に影響を与えることを踏まえて、赤い背景の上に顔を置くと、どのように印象が変わるのかを実験しようと考えました。
チームは今回、背景を赤色にすることで顔が支配的・威圧的に見えやすくなるのではないかと仮定しました。
そこで次の2つの実験を行っています。
・早稲田大学の日本人学生28名が参加
・コンピューター生成の女性の顔を9段階の「支配性レベル」に調整
・顔を「赤」「緑」「灰色」の背景で提示
・参加者に「支配的」か「服従的」かを分類させる
結果、赤い背景の顔は、他の背景色よりも支配的に見える傾向が強いことが確認されました。
・早稲田大学の別の27名の学生が参加
・同様に、男性の顔を用いた実験を実施
結果、男性の顔でも同様の効果が見られ、赤い背景が支配性の印象を強めることが示されました。
つまり、男性の顔でも女性の顔でも背景を赤色にするだけで、支配性・威圧性を高められることがわかったのです。
また興味深いことに、この効果は人の顔画像だけでなく、幾何学的な図形でも見られました。
61名の参加者に10種類の幾何学的図形を「赤」「緑」「灰色」の背景上で提示し、それぞれの図形の「支配性」を7段階で評価してもらったところ、赤い背景の図形は、緑や灰色の背景よりも支配的と評価される傾向があったのです、
この知見、ビジネスやデザインの分野にも応用できるかもしれません。
例えば、履歴書の写真やプレゼンテーション資料の背景色を赤にすると、より「威厳のある」印象を与える可能性があります。
また、政治家やリーダーが赤を使った演出を行うことで、より強い影響力を持つように見せることもできるかもしれません。
一方で、赤の使い方には注意が必要です。
例えば、リラックスした雰囲気を作りたい場合には、赤よりも青や緑の方が適しているでしょう。
今回の研究は、色が人間の心理や社会的相互作用にどのように影響を与えるかを示す重要な手がかりを提供しています。
参考文献
Faces are seen as more dominant when presented against a red background
https://www.psypost.org/faces-are-seen-as-more-dominant-when-presented-against-a-red-background/
元論文
Red Backgrounds Enhance Dominance in Human Faces and Shapes
https://doi.org/10.1177/14747049241284602
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部