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しかし、果たして日々の油の選択が、本当に寿命に影響を及ぼすのでしょうか。
この疑問を解明するため、研究チームは30年にわたる追跡調査を行いました。
研究対象者は、「看護師健康調査(Nurses’ Health Study)」および「医療従事者追跡調査(Health Professionals Follow-up Study)」の参加者22万1054人です。
各調査では、バターや植物油の摂取状況が4年ごとに詳細に記録されており、健康状態との関連が分析されました。
また、食事以外の生活習慣である運動、喫煙、アルコール摂取、BMIなども考慮に入れ、油の摂取がどれほど死亡リスクに影響するのかを統計的に評価しました。
この研究の結果、バターの摂取量が多いほど死亡リスクが高まることが明らかになりました。
具体的には、バターの摂取量が最も多いグループは、最も少ないグループに比べて死亡リスクが15%高いことが示されました。
バターの摂取量が1日10グラム増えるごとに、がんによる死亡リスクは12%増加します。
一方で、植物油の摂取量が多い人ほど死亡リスクが低下することが明らかになりました。
オリーブオイル、キャノーラオイル、大豆油を最も多く摂取する人は、最も少なく摂取した人よりも全死亡リスクが16%低かったのです。
特に、オリーブオイルは心血管疾患のリスク低下に顕著な効果があることが示されました。
植物油の摂取量が1日10グラム増えるごとに、がん死亡率が11%、心血管疾患による死亡リスクが6%減少すると分かりました。
さらに研究チームは、バターを植物油に置き換えた場合のモデルを作成。
これにより彼らは、1日10グラムのバターを同量の植物油に置き換えることで、がん死亡率と総死亡率が17%低下すると結論付けました。
たった1かけのバターをオリーブオイルに置き換えるだけで、これだけの違いが生じるとは驚きです。
では、これらの結果を私たちの食生活にどのように応用できるのでしょうか。
料理にバターを使うのではなく、オリーブオイルやキャノーラオイルを使うことを意識できます。
バターを完全に排除するのではなく、減らすことから始めるとよいでしょう。
バターが好きな人も多いため、完全に排除するのではなく、バターの使用量を減らし、適度に植物油を取り入れることが現実的だと言えます。
また、市販食品の脂質成分をチェックすることも大切です。
クッキーやスナック菓子にはバターが大量に含まれていることもあるため、成分表をチェックし、可能であれば植物油を使った商品を選ぶことをおすすめします。
何気ない食生活の選択が、寿命を左右すると言われています。
たった10グラムの油の違いが明暗を分けるかもしれません。
参考文献
This simple dietary swap could help you live longer
https://newatlas.com/diet-nutrition/dietary-swap-longevity/
Large Study of Dietary Habits Suggests More Plant Oils, Less Butter Could Lead to Better Health
https://www.massgeneralbrigham.org/en/about/newsroom/press-releases/dietary-habits-study-suggests-more-plant-oils-less-butter-lead-to-better-health
元論文
Butter and Plant-Based Oils Intake and Mortality
https://doi.org/10.1001/jamainternmed.2025.0205
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部