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この時期に、人類がアボカドを食用として利用し始め、自然の中で育つアボカドの木を管理するようになったのではないかと考えられています。
ただしこれまでの研究では、アボカドが本格的に栽培され始めたのは約4000年前と推測されていました。
しかし今回の研究では、これまでの予想よりもさらに3000年以上も前からアボカドの栽培化が始まっていた可能性が示唆されたのです。
では、アボカドの栽培化に成功したのはどこの国の人々だったのでしょうか?
研究チームは今回、中央アメリカのホンジュラスにあるエル・ヒガンテ岩陰遺跡から発掘された1725個の化石化したアボカドを分析しました。
その中から特に状態の良い56個のサンプルについて炭素年代測定を行い、最も古いものは約1万1000年前にさかのぼることが判明しました。
この時期にはすでに人類が野生のアボカドを食し、その種子を管理し始めたことが伺えます。
さらに、これらの化石を詳細に調べた結果、アボカドの果皮が時代とともに厚くなり、種子のサイズも大きくなっていることがわかりました。
これは人間がより大きなアボカドを選んで栽培していた可能性を示しています。
そしてこれらの形態的変化のデータに基づき、アボカドの栽培化に成功したのは約7265〜7565年前の間であることが特定されたのです。
チームが驚いたのは、この年代がトウモロコシの栽培化よりも数千年早かったことでした。
研究主任のアンバー・ヴァンデルワーカー(Amber VanDerwarker)氏は「この発見はメソアメリカ農業に関する私たちの理解を根本から覆すものである」と話します。
「これまで、メソアメリカの農業はトウモロコシの到来によって狩猟採集民が農民へと変化したと考えられてきました。
しかし私たちの研究結果は、古代ホンジュラスの人々がすでに農民であり、トウモロコシが到達する以前からアボカドの栽培に完全に従事していたことを示しているのです」
また本研究の成果は、アボカド栽培の過去だけではなく、未来にも重要な示唆を与えると同氏は話しています。
というのも現在、世界のアボカド産業の約90%は「ハス(Hass)」という単一品種に依存しており、遺伝的多様性が乏しいため、病害や気候変動に対する耐性が弱いことが問題視されているのです。
しかし今回の研究で調査された7500年前のアボカドは多様な遺伝子を持っていたことが明らかになりました。
チームは「こうした遺伝的多様性のデータを活用し、現代のアボカド栽培においても異なる品種を組み合わせることで、気候変動に適応しやすいアボカドを生み出すことが期待できる」と話しています。
参考文献
Avocado cultivation’s ancient origins hold lessons for a changing climate
https://news.ucsb.edu/2025/021782/avocado-cultivations-ancient-origins-hold-lessons-changing-climate
Fossil evidence found of humans domesticating avocados 7,500 years ago
https://phys.org/news/2025-03-fossil-evidence-humans-domesticating-avocados.html
元論文
Early evidence of avocado domestication from El Gigante Rockshelter, Honduras
https://doi.org/10.1073/pnas.2417072122
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部