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エピジェネティック時計とは、DNAメチル化(遺伝子のON/OFFを調節する化学的修飾)のパターンを解析し、個人の老化の進行を測る技術です。
DNAメチル化は、環境要因や生活習慣の影響を受けることが分かっており、その変化が体の老化速度と深く関係しています。
エピジェネティック時計にはいくつかの種類があり、本研究では、PCPhenoAge、PCGrimAge、DunedinPACEという3つの時計が使用されました。
今回、南カリフォルニア大学の研究チームは、平均年齢68歳の約3700人を対象に、彼らの血液サンプルを収集し、エピジェネティック時計を測定しました。
そして各参加者の居住地における気温データを血液採取の日から過去6年間に遡って収集し、累積的な高温曝露がどの程度あったのかを算出。それらの関連性を分析しました。
研究チームは、アメリカの暑さ指数を使用して、注意(32℃に達する日)、極度の注意(32~39℃)、危険(39~51℃)の順に暑さを評価しました。
また、短期間(直近7日間)・中期間(直近30日間)・長期間(直近6年間)の温度変化がDNAメチル化に与える影響を解析するために、統計モデルを用いました。
そして分析の結果、猛暑への曝露により老化が進むと分かりました。
PCPhenoAgeでは6年間で生物年齢が 2.48 歳増加していました。
また、PCGrimAgeでは1.09 歳、DunedinPACEでは0.05歳増加しました。
つまり、暑い地域に住んでいる人は、6年間で6歳分の老化が生じるのではなく、最大8.48歳分の老化が生じる可能性があるのです。
では、猛暑が老化を加速させる背景にはどのようなメカニズムがあるのでしょうか?
研究者たちは、その鍵となる要因の1つに「DNAメチル化の変化」を挙げています。
まず、高温環境に長時間さらされることで体にストレスがかかり、それに適応しようとする生理的変化が生じます。
しかし、これが過剰になるとDNAメチル化の異常を引き起こし、結果的に老化が促進されるのです。
とはいえ、3つのエピジェネティック時計の変化が大きく異なる理由は正確には分かっておらず、今後の更なる研究が必要とされています。
猛暑は、私たちの老化を加速させる可能性があり、気候変動が進む現代において無視できない問題です。
適切な暑さ対策を講じることで、老化の進行を抑えることができるかもしれません。
水分補給や適切な空調管理、紫外線対策などを意識しながら、日々の生活の中で暑さへの適応策を考えてみてはいかがでしょうか。
参考文献
Extreme Heat Can Accelerate Aging, New Research Finds
https://www.sciencealert.com/extreme-heat-can-accelerate-aging-new-research-finds
元論文
Ambient outdoor heat and accelerated epigenetic aging among older adults in the US
https://doi.org/10.1126/sciadv.adr0616
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部