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ツノゼミはカメムシ目に属する昆虫のグループであり、世界に約600属3200種ほどが知られています。
ツノゼミの姿を初めて見る人は、そのユニークな形状に驚くことでしょう。
まるで枝が伸びたようなもの、トゲが生えたもの、さらには動物の角のような形をしているものまで、ツノゼミのツノは多種多様です。
このツノは「前胸」と呼ばれる部分が変化したもので、成虫の背中に突き出るように発達しています。
このツノの形はかなりバリエーションに富んでおり、世界中の研究者や昆虫愛好家の間で長年注目されてきました。
こちらが実際のツノゼミたちの姿です。
しかしツノゼミの形状があまりにも多種多様すぎるあまり、研究者たちは種ごとのツノを比較することが困難でした。
上の写真を見ても分かるように、AやFのツノは一目でわかったとしても、例えばAやFのツノはCでいうどこなのかがはっきりしないのです。
種ごとに共通する体の構造を見極めることは、その種がどのように進化してきたかを紐解く上でも欠かせません。
そこで研究チームは今回、「異なる種のツノのどの部分が共通しているのか(相同点)」を見つけようと考えました。
研究チームは、ツノゼミの中でも特に代表的な13種を選び、それぞれのツノの形状を詳細に観察しました。
使用した手法は以下の通りです。
・マイクロCTスキャン:ツノの内部構造を詳細に解析
・走査型電子顕微鏡(SEM):ツノの表面構造を観察
・組織学的解析:ツノの細胞構造を調査
これらの手法を組み合わせることで、単なる外見の比較だけでなく、ツノの内部構造や成長過程を明らかにすることができました。
その結果、ツノゼミのツノには以下の4つの共通する構造(相同点)があることが判明しました。
1:側方突起(Humeral angle):ツノの両側にある突起
2:中央管(Median carina):ツノの中央を走る隆起部分
3:中央管の前方開始点(Anterior point):中央管が始まる位置
4:中央管の後方終着点(Posterior apex):中央管が終わる位置
これらの相同点を基にチームは、ツノゼミのツノの進化パターンを整理し、各ツノがどのように変化したのかを説明するためのモデルを構築することができました。
これまでツノゼミのツノはあまりにも多様で、分類や進化の研究が難航していました。
しかし今回の研究により、ツノゼミのツノに共通する構造が明確になり、彼らの進化プロセスを理解する上で大きな前進となりました。
ツノゼミはその多様でユニークな姿から写真集も発売されるほど人気の昆虫です。
この研究をきっかけに、ツノゼミに注目してみるのも面白いかもしれませんね。
参考文献
ツノゼミの多様な「ツノ」における種間相同点の整理-種ごとに異なるツノ形態はどことどこが対応するの?-
https://www.shizuoka.ac.jp/news/detail.html?CN=10723
元論文
A general theory of the complex pronotum morphology of treehoppers in Smiliinae and its relatives (Hemiptera: Membracidae) and its applicability to other subfamilies
https://doi.org/10.14411/eje.2025.005
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部