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研究チームは、アメリカとカナダの467人のスマホユーザー(平均年齢32歳、女性63%・男性37%)を対象に、1カ月間の追跡調査を実施しました。
参加者は、スマホのインターネットを遮断するアプリ「Freedom」をインストールし、2週間にわたりWi-Fiおよびモバイルデータをブロックしました。
ただし、スマホを使った通話やテキストメッセージは利用可能とし、完全にデジタル機器を遮断するのではなく、スマホのインターネットのみを制限しました。
そのため、パソコンを使えばネット利用は自由に許可されています。
研究では、以下の3つの指標を測定しました。
・主観的幸福感:ポジティブ感情、ネガティブ感情、人生満足度を測定
・精神的健康:うつ、不安、怒り、社交不安などの症状を評価
・持続的注意力:注意力の持続性を客観的に測定
そして実験の結果、スマホのインターネットをブロックした2週間で、すべての指標が顕著に改善しました。
・主観的幸福感が向上し、ポジティブな感情が増加
・不安やうつの症状が軽減し、メンタルヘルスが改善
・持続的注意力が向上し、注意散漫が減少
さらに注意力の向上はスマホでのネット利用が再開された後も持続することが確認されました。
これは短期間のスマホ断ちが、持続的な認知機能の改善につながる可能性を示唆しています。
研究者たちは、スマホのインターネット利用を止めることで、以下のような変化が生じることを発見しました。
1:オフライン活動が増える
参加者は、対面での社交や運動、自然の中での活動により多くの時間を使うようになりました。
2:メディア消費の減少
SNSやニュースの過剰なチェックが減り、心の負担が軽くなりました。
3:社会的つながりの強化
実際の対面コミュニケーションが増え、孤独感が軽減されました。
4:注意力の向上
常に通知に気を取られることがなくなり、集中できる時間が増えました。
5:睡眠の質の向上
就寝前のスマホ使用が減少し、睡眠の質が改善されました。
これらの生活習慣の変化がメンタルヘルスを改善し、集中力や注意力を向上させたと考えられます。
今回の研究は、スマホの常時接続が私たちの心理的健康や注意力に予想以上の負担をかけていることを示しています。
それと同時に、完全にスマホを手放す必要もないことが明らかにされました。
実験でも示されたように、一定期間だけのネット利用の制限を設けるだけでも、ポジティブな効果が得られるのです。
例えば、
・寝る前1時間はスマホをオフにする
・週末の一部の時間だけスマホを使わない「デジタルデトックス」を実施する
・仕事中は通知をオフにする
といった工夫を取り入れることで、日常のストレスが軽減し、集中力が向上するかもしれません。
参考文献
Want better focus and a happier mind? This simple smartphone change could be the answer
https://www.psypost.org/want-better-focus-and-a-happier-mind-this-simple-smartphone-change-could-be-the-answer/
元論文
Blocking mobile internet on smartphones improves sustained attention, mental health, and subjective well-being
https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgaf017
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部