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言うまでもなく、そこまで巨大な体で飛行するためには、体重を軽く保つ必要がありました。
そしてその秘密は、翼竜の骨の特異な構造にありました。
これまでの研究によると、翼竜の骨は鳥類と似ていて、内部が空洞になっていることが分かっています。
しかし、分厚い革のような翼の膜の重量に耐えるには、単に軽いだけでなく、丈夫な骨である必要があります。
では、翼竜の骨はどのようにしてこの2つの条件をクリアしていたのでしょうか。
今回、マンチェスター大学の研究チームは、その秘密を暴くために、最新のCTスキャン技術を用いて翼竜の化石を高解像度で解析しました。
その後、3Dモデリングとコンピューターシミュレーションを駆使し、負荷がかかった際の強度や柔軟性を詳しく調査しました。
分析の結果、翼竜の骨の内部に「微細な管のネットワーク構造」があると分かりました。
「人間の髪の毛の幅の約20分の1」の幅の小さな管が、画像のように張り巡らされていたのです。
これらの構造は、骨組織全体に栄養素を伝達し、骨の成長を促進・維持する役割を担っていたと考えられます。
そして、この微細構造は、骨に亀裂が入る時、その亀裂が奥深くまで走るのを防ぐ効果もあったようです。
骨の表面に小さな亀裂が生じても、この微細構造が亀裂の進行を逸らし、亀裂が最初の方で止まるようになっているのです。
小さな亀裂は比較的早く治癒するため、骨が折れてしまうような大ごとには至りません。
この研究成果は、将来的にさまざまな分野で活用される可能性があります。
例えば、超軽量の航空機を設計することで燃費効率が向上し、CO2排出量の削減につながるかもしれません。
また、軽量でありながら強度を保つことで、宇宙空間での負荷に耐えうる宇宙船の開発にも貢献するでしょう。
さらに、長時間飛行が可能なドローンの開発にも活かされることが期待されています。
研究者は、「これまでに生きてきたすべての種のうちほとんどが絶滅していますが、その多くは『設計ミス』ではなく、急速な環境変化が原因でした」と述べています。
絶滅した翼竜であっても、現代の技術に生かせる可能性は十分にあるのです。
数千万年前に空を飛んでいた翼竜が、21世紀の航空技術を飛躍的に進化させる日が訪れるかもしれません。
参考文献
Ancient pterosaur bones could inspire the future of aerospace engineering
https://www.manchester.ac.uk/about/news/ancient-pterosaur-bones-could-inspire-the-future-of-aerospace-engineering/
New analysis of pterosaur bones may bring us lighter, stronger aircraft
https://newatlas.com/science/pterosaur-bones-lighter-stronger-aircraft-materials/
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部