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牛乳は健康に良いとされ、多くの人が毎日の食生活に取り入れています。
しかし、「どこまでが適量で、どこからが過剰なのか」という点については、これまであまり注目されてきませんでした。
一般的に、牛乳にはカルシウムやタンパク質だけでなく、脂肪や糖分も含まれています。
特に全乳には、100mlあたり3g以上の脂肪が含まれています。
牛乳は液体で飲みやすいため、牛乳が好きな人は大量に摂取することがあるかもしれません。
その場合、大量の脂肪も一緒に体の中へ取り入れてしまうことになり、体内の脂質代謝に異常をきたす可能性があります。
オランダのロッテルダム在住の54歳の男性も、おそらく牛乳が大好きだったのでしょう。
もしくは何らかのチャレンジを行っていたのかもしれません。
彼は「喉の渇きを潤すため」と主張していますが、いずれにせよ、2日間で22リットルもの牛乳(全乳)を飲みました。
その結果、8日間にわたり息切れ、過度の発汗・排尿、喉の渇きを経験し、腹部は膨張するようになりました。
そして彼が病院で診察を受けたところ、彼の血液が白く濁りっているとわかりました。
その血液を遠心分離機にかけると、血漿が本来の薄い黄色ではなく「ミルク色」に変化してたのです。
牛乳を大量に飲むことで、血の色まで牛乳色になっていました。どうしてでしょうか。
通常、脂肪は消化・吸収されると、血液中を「カイロミクロン」という微細な粒子によって運ばれます。
しかし、今回のケースでは、摂取した脂肪の量が多すぎて処理が追いつかず、血液中に蓄積。血漿が「牛乳のように白く濁る」状態になったのです。
医師らが男性の血液を調べると、トリグリセライド(血液の中の脂肪の1つである中性脂肪)が非常に高い数値を示していました。
高トリグリセリド血症では、1000 mg/dLを超えると膵炎のリスクが高まると言われていますが、今回の男性の血中トリグリセリドは驚異の16713 mg/dL(通常の100倍以上)。
これほどの数値は、医学的にも非常に稀なケースです。
検査では、血糖値も1350 mg/dL(通常の約13倍)と異常に高いことが分かりました。
治療の第一歩として、医師たちは輸液とインスリン療法を開始。
さらに、余分な脂肪を取り除くために、血漿交換療法(Plasma Exchange, PE)を2回実施しました。
この治療によって、血中のトリグリセリドを除去し、許容レベルまで低下させることに成功しています。
治療後、男性の血漿は通常の透明な状態に戻り、無事に回復したようです。
この事例は、牛乳の過剰摂取がどれほどの健康リスクを伴うかを明確に示しました。
牛乳自体は栄養価が高く、適量であれば健康に良い飲み物です。
しかし、どんなに健康的な食品でも、「飲みすぎ」は体に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に脂肪や糖分を多く含む食品を過剰に摂取すると、代謝が追いつかず、深刻な健康リスクを引き起こす可能性があると分かりました。
やはり何事もバランスが大切なのです。
参考文献
Diagnostic dilemma: A man ended up in the ER after drinking 6 gallons of milk in 2 days
https://www.livescience.com/health/food-diet/diagnostic-dilemma-a-man-ended-up-in-the-er-after-drinking-6-gallons-of-milk-in-2-days
元論文
Milk Intoxication—A Case Report
http://www.scirp.org/journal/PaperInformation.aspx?PaperID=19410
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部