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マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)とハーバード医科大学(Harvard Medical School)の研究チームは、アメリカの成人42,597人を対象に、ソーシャルメディアの利用頻度とイライラ感の関係を調査しました。
研究で分析されたのは、次のポイントです。
ここでイライラ感のレベルってどうやって調べるんだと感じるかもしれませんが、これには個人の短期間のイライラ感を評価するために開発された心理測定ツール「Brief Irritability Test(BITe)」が利用されました。
このテストを行うことで、参加者の感じている怒りや欲求不満の程度を数値化し、ストレスや感情の起伏を測定することができるのです。
そのためBITeのスコアが高い人ほど、日頃イライラしているということになります。
すると、1日に「数回」ソーシャルメディアを利用する人は、利用しない人に比べてBITeスコアが平均1.43ポイント高く、「ほとんど一日中」利用する人では3.37ポイント高いことが分かりました。
特にX(旧Twitter)やTikTokの頻繁な利用者は、イライラ感のレベルがより高い傾向にあり、さらに頻繁に投稿を行うユーザーほど、イライラ感のスコアが高くなっていたのです。
この研究では、ソーシャルメディアの頻繁な利用が直接的にイライラ感を引き起こしているのか、それとも元々イライラしやすい人がソーシャルメディアを頻繁に利用するのか、その因果関係は明らかにされていません。
ただ年齢との関連を調べたところ、若年層(18~34歳)でソーシャルメディアの利用が最も多く、それに伴いイライラ感も強いと分かりました。一方で、65歳以上の高齢者ではソーシャルメディアの利用頻度が低く、イライラ感も比較的低い傾向がありました。
この傾向を見ると、利用頻度がイライラ感に関連している可能性は高いと考えられます。
ではなぜSNSの利用が私たちをイライラサせるのでしょうか? それには次のような要因が考えられます。
1つ目の要因は、ネガティブな情報の過剰摂取です。ソーシャルメディア上にはニュース記事や意見の対立、誹謗中傷などのネガティブな情報があふれおり、これらを頻繁に目にすることで、心理的ストレスが増している。
2つ目の要因は、他者との比較の機会が増えることです。SNSでは、他人の成功や華やかな生活を目にする機会が多く、自分の現状と比較して劣等感を抱きやすくなります。その結果、欲求不満が生じ、イライラ感につながるのです。
また、議論や炎上の影響も大きいと考えられます。X(旧Twitter)やTikTokでは、意見の対立や炎上が頻繁に発生します。自分が直接関与しなくても、他者の攻撃的な言動を見続けることで、心の平穏が乱れる可能性があるのです。
では、日常生活の中で、イライラしないためにはどうすれば良いのでしょうか? 今回の研究を踏まえると、次のようなことを取り入れるとなんだか無性にイライラするという状況が改善できるかもしれません。
最新の研究では、ソーシャルメディアの頻繁な利用とイライラ感の増大との関連が示されました。 特にX(旧Twitter)やTikTokの利用が多い人ほど、イライラ感が強い傾向にあることが分かりました。
ソーシャルメディアの利用を楽しんでいる人も多いでしょうが、実際はその裏で、ネガティブな情報の過剰摂取や他者との比較、炎上などが私たちを日常的にイライラさせてしまうのです。
私たちはちょっとでも時間が空くとスマホを見てしまう癖がついてしまっていますが、適度な使用を心がけ、オフラインでの活動を充実させることが、精神的な健康を維持する秘訣のようです。
ソーシャルメディアは便利なツールですが、使い方次第で私たちの気分に大きな影響を与えることを意識し、上手に活用していきましょう。
参考文献
Frequent social media use tied to higher levels of irritability
https://medicalxpress.com/news/2025-01-frequent-social-media-higher.html
元論文
Irritability and Social Media Use in US Adults
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2828803
ライター
相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。
編集者
ナゾロジー 編集部