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ところがこの研究には難点があり、批判も受けていました。
調査対象のほとんどが大学生であり、特定の地域(テキサス州オースティン)に住んでいたため、より幅広い年齢層や地域での再調査が求められていたのです。
そこで今回の最新研究では、より多様なサンプルを用いて「本当に女性は男性よりも話すのか?」を再検証することになったのです。
メール教授らの研究チームは、より多様なサンプルを用いるため、10歳から94歳までの男女2197人を対象に調査を実施しました。
この研究では、EAR(Electronically Activated Recorder)という録音装置を活用。
これはランダムな間隔で作動し、日常会話の断片を記録する装置で、参加者が自然に話す量を正確に測定できることで知られます。
チームは4カ国で行われた22の異なる研究から約63万件の録音データを収集し、解析を行いました。
その結果、性別による会話量の違いは次のように示されました。
つまり、「女性は常に男性よりも話す」というわけではなく、特定のライフステージでのみ「おしゃべりにある」傾向が見られたのです。
では、なぜ25~64歳の間に女性はたくさん話すようになるのか?
その理由として、研究者たちは「育児」や「家庭内での役割」の影響を挙げています。
25~64歳の女性は子育てや孫の面倒を見たり、家庭の管理を担うことが多く、結果として会話量が増える可能性があるのです。
さらに研究では興味深いことに「人々が全体的に話す量が減っている」という新たな発見もありました。
2005年から2018年にかけて、1日の平均発話数は1万6000語から1万3000語へと減少。
これはスマートフォンの普及やSNS・メッセージアプリの使用増加により、人と対面で直接話す機会が減っている影響が指摘されています。
今回の研究では「女性は常に男性より話す」という通説は部分的に正しく、特定の年齢層(25~64歳)でのみ女性の発話量が多いことが示されました。
また男女ともに人々の会話量が減少しているという事実も明らかになりました。
デジタル時代において、私たちは「話すこと」をどのように捉えるべきなのか。
この研究はそんな私たちの「コミュニケーションの未来」について考えさせられる結果となっています。
参考文献
Do women talk more than men? It might depend on their age
https://news.arizona.edu/news/do-women-talk-more-men-it-might-depend-their-age
元論文
Are women really (not) more talkative than men? A registered report of binary gender similarities/differences in daily word use.
https://doi.org/10.1037/pspp0000534
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部