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「親切さ(Niceness)」は利他的行動の一種であり、他者を温かく友好的に扱い、その幸福を保証し、思いやりと協力的な関係を育むことと定義されます。
例えば、「他人に笑顔を向ける」「穏やかに接する」「優しい言葉をかける」「感謝の気持ちを伝える」などの親切な行為は、お金など一切使うことなく、他者の気分を向上させる有益なコミュニケーションとなります。
一方で、親切さは他者の気分をよくすると同時に、自分と相手との調和的な人間関係が育まれるため、親切にした人自身の健康にも有益になっていることが予想されます。
そこでシナン・オクル(Sinan Okur)氏ら研究チームは、トルコ在住の一般人を対象に、親切さと抑うつ症状および主観的な幸福度との関連性を調べることにしました。
今回の研究は2つの段階で行われました。
1つ目の研究では、404人のトルコ人(うち女性は210人)を対象としています。
参加者の平均年齢は32歳で、18歳から71歳までの範囲でした。
2つ目の研究では、372人のトルコ人(うち女性は184人)が参加し、平均年齢は23歳となっています。
1つ目の研究では、参加者は「親切さ」を測定する尺度に加え、ビッグファイブ性格特性(開放性・誠実性・外向性・協調性・神経症的傾向)の評価と主観的活力(例えば「私はエネルギッシュで生き生きしている人間だ」などの項目)を評価しました。
2つ目の研究では親切さ尺度に加え、専用の質問票を用いて、抑うつ症状と主観的幸福感を評価しています。
まず1つ目の研究の結果、親切さは特定のビッグファイブ性格特性や主観的活力とは有意に関連しておらず、独立した心理的特性であることが示されました。
これは要するに、親切さが、外交的な人であろうと内向的な人であろうと、どんな人でも持てることを意味しています。
そして2つ目の研究の結果、親切さのレベルが高い人ほど、抑うつ症状の発症リスクが有意に低く、さらに主観的な幸福度が高いことが判明したのです。
なぜ人に親切にすることが自分の心身の健康を高めてくれるのか。
その理由については以下の要因が指摘されています。
親切な行動を行うことで、喜びや満足感といったポジティブな感情が生まれます。
こうしたポジティブな感情は、抑うつ症状の軽減や幸福感の向上に寄与します。
実際、親切行動を意識的に行うことで主観的幸福感が向上することが過去の研究でも報告されています。
親切な行動は、他者との関係性を深め、社会的なつながりを強化します。
強固な人間関係は、孤独感の軽減や精神的な支えとなり、抑うつ症状の予防や軽減に効果的です。
他者に親切にすることで「自分が他者に貢献できている」という感覚が得られ、自己効力感や自己肯定感が高まります。
これらは、抑うつ症状の軽減や主観的幸福度の向上に寄与します。
親切な行動を通じて、他者からの感謝を受けることで、自分自身も感謝の気持ちを抱きやすくなります。
感謝の感情は、ポジティブな感情を増幅させ、日常的な幸福感の向上に繋がります。
これらの要因から、親切さは抑うつ症状を軽減し、主観的幸福度を高めると考えられるのです。
以上の結果は、親切な行動が他者に利益をもたらすだけでなく、自分自身の健康にもプラスの効果を与えることを示した成果です。
親切な行動は、特別なスキルや努力を必要とせず、誰でも簡単に始められます。
本当に小さなことからでOKです。
電車の席を譲ったり、エレベーターが周囲の人が降りるのを優先したり、笑顔で軽く会釈するだけでも、人に与える印象は大きく変わります。
そのお返しとして、相手から「どうも、ありがとうございます」という一言をもらえるだけで、あなたの心身に活力が湧き、健康レベルが上がるかもしれません。
参考文献
Niceness is a distinct psychological trait and linked to heightened happiness
https://www.psypost.org/niceness-is-a-distinct-psychological-trait-and-linked-to-heightened-happiness/
元論文
How Does More Niceness Bring More Happiness? The Association Between Niceness, Depression, and Subjective Happiness
https://doi.org/10.1177/00332941241278335
ライター
ナゾロジー 編集部
編集者
ナゾロジー 編集部