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鼻の先端をてのひらのように動かし、果物をつかむことができるのです。
ではゾウは、どうしてそこまで器用に鼻を動かすことができるのでしょうか。
その秘密を解説します。
目次
Baby elephant asking for treats
pic.twitter.com/CtY5iU2iXR— Science girl (@gunsnrosesgirl3) December 16, 2024
赤ちゃんゾウが鼻先を器用に使って野菜をつかみ、柵の向こうにもっていってしまいます。
おそらく、それらのおやつを美味しそうに食べているのでしょう。
またすぐに鼻を出して、次のおやつを待っている様子は、子供がおやつをおねだりしているように見えます。
ゾウの鼻だけしか映っていませんが、なんとも微笑ましい動画ですね。
この動画を見た多くの人は、赤ちゃんゾウの愛らしさだけでなく、鼻の器用さにも驚きます。
柵の下から出された鼻は、俊敏かつ柔らかで、まるで人間の手や指のように器用に野菜をつかんでいるのです。
では、どうしてゾウの鼻は、ここまで器用に動くのでしょうか。
ゾウの鼻とは、鼻と上唇が一緒になって長く伸びた部位です。
そしてゾウの鼻に骨は存在せず、すべてが筋肉で構成されています。
しかも鼻の筋肉は4万個以上もあり、人間の身体全体には600の筋肉しかないことを考えると、ゾウの鼻の複雑さと緻密さがよく理解できます。
ゾウの鼻は、このように「筋肉の集合体」なので、驚くべき柔軟性と制御力をもっているのです。
また、ドイツのベルリン・フンボルト大学(Humboldt University of Berlin)の2023年の研究では、ゾウのヒゲが果たす役割に焦点が当てられました。
ゾウの鼻には、赤ちゃんの時点で約1000本のヒゲが生えており、特に鼻先に密集しています。
そして論文では、「この鼻のヒゲが、物体を感知したり、鼻の上で物体のバランスを保ったりするのに役立っている可能性」が示されました。
さらに最近の研究では、ゾウの鼻の「伸び方」にも秘密が隠されていると分かりました。
ゾウの鼻が自由自在に動いている様子を見ると、その鼻は全体が同じ仕方で伸びているように感じるものです。
しかし、アメリカのジョージア工科大学(GATech)の2022年の研究では、ゾウの鼻は、全体が均等に伸びるのではなく、先端の方から先に伸びはじめ、根元に近づくほどあまり伸びないことが分かりました。
その理由について研究チームは、「鼻の先端部を伸ばして、根元をそれほど動かさないのは、(使う筋肉が少ないので)動かすのが楽だからだと考えられます」と述べています。
ゾウたちは、膨大な数の筋肉で構成されている鼻だからこそ、ちゃんとエネルギーを節約して、効率よく動かしていたのです。
ここまで、ゾウの鼻に秘められた「器用さの秘密」を考えてきました。
ではゾウは、これらの能力を用いて、どれほどの作業ができるのでしょうか。
Baby elephant asking for treats
pic.twitter.com/CtY5iU2iXR— Science girl (@gunsnrosesgirl3) December 16, 2024
Xの投稿で示されたように、野菜や果物をつかむことは簡単です。
また、ドイツのベルリン・フンボルト大学(Humboldt University of Berlin)の2023年の別の研究では、ゾウがその鼻を使ってバナナの皮を剥けると報告されました。
ゾウは、鼻先でバナナの皮をつかんだ後、バナナ本体を地面へ振り払い、その勢いを利用して皮を剥くのです。
地面に落ちたバナナは、確かに皮が剥けています。
ちなみに、仲間のゾウがいると、皮を剥かずに食べる傾向があるようで、専門家は「おそらく、皮むきしている間に他のゾウにバナナを食べ尽くされてしまうからでしょう」と述べています。
このエピソードから、ゾウが示す器用さは、鼻の機能だけでなく、知能の高さからも来ていると分かります。
こうした数々の発見にも関わらず、実はは、ゾウの鼻のメカニズムに関する研究は、前世紀からあまり進んでいません。
今後も、その器用さがどこから来るのか、新しい理解がもたらされる時を楽しみに待ちたいものです。
参考文献
WHY DO ELEPHANTS HAVE TRUNKS… AND WHAT ARE THEY FOR?
https://www.bornfree.org.uk/news/why-do-elephants-have-trunks-and-what-are-they-for/
元論文
The functional anatomy of elephant trunk whiskers
https://doi.org/10.1038/s42003-023-04945-5
Skin wrinkles and folds enable asymmetric stretch in the elephant trunk
https://doi.org/10.1073/pnas.2122563119
Elephant banana peeling
https://doi.org/10.1016/j.cub.2023.02.076
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部