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しかし、ここでダイエット効果を期待する人には、脂肪がたくさん燃えているからといって、他の時間帯での運動に比べ、消費カロリーが増えるわけではないという注意点もあります。
事実、この研究でも、24時間を通じた総消費カロリーには差が見られなかったことが示されています。
ここで、多くの人が見落としがちなのは、体重が増える原因が必ずしも脂肪の摂りすぎというわけではないという点です。
国民栄養調査によると、私たちの食事から得るエネルギーの50%以上が糖質から来ているのに対し、脂質からは約30%にとどまっています。 これは、私たちが普段から糖質を多く摂っていることを示しています。
また、私たちの体は安静時では糖質よりも脂肪の方を使ってエネルギーを燃やしている上、前の食事から時間が経つと、脂肪がより多く使われます。
つまり、運動をしていない日常生活でも、摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスがうまく取れていれば、食べた脂肪の分ぐらいはちゃんと燃えているのです。
そのため、運動中に脂肪が燃えなくても、糖質をエネルギーとして使うことで、余った糖質が体脂肪に変わるのを減らすことができます。
もっと言うならば、ダイエット効果を高めたいなら、運動中にどちらのエネルギー源が使われるか(脂肪か糖質か)よりも、摂取カロリーを消費カロリーよりも少なくすることが大切です(摂取カロリー<消費カロリー)。
次のページでは、朝に運動をすることがダイエットにマイナスに働く可能性についても考察していきます。
一晩絶食状態で運動をするということは、基本的には朝起きたばかりの、寝起きに近い状態で体を動かすことになります。
この状態は体温が低く、頭も体も十分に覚醒していないため、運動がきつく感じやすくなります。
その結果、日中に運動を行うのと比べて、運動量や強度が下がってしまいがちです。
実際、体内に糖質(グリコーゲン)が少ない状態では、運動能力が低下しているので、実験のように所定の運動を行うことを強く指示された場合は別としても、日常的に行う場合では、日中に行うのと同じ負荷をこなすのが難しくなるでしょう。
これでは、消費カロリーを増やすというダイエット目的にはマイナスになります。
さらに、興味深い事実として、2021年にイギリスのラフバラー大学(Loughborough University)の研究グループが発表した論文によると、朝食前に運動が計画された場合、前日の摂取カロリーが増えることが明らかになっています。
具体的には、運動が計画されていない場合と比べて、前日の朝食と昼食の摂取カロリーには差がなかったものの、夕食の摂取カロリーが約13%増えていました。
もしかしたら、潜在的に朝の運動はキツいから、エネルギーを蓄えておこうと意識したのかも知れません。
この研究は、1回の運動前の食事に焦点を当てたものですが、研究グループは、有酸素運動を行っている人々が運動のタイミングによって摂取カロリーが増えてしまう可能性があると指摘しています。
仮に、そのようなことが起こる場合、有酸素運動によって消費カロリーが増えたとしても、狙い通りのダイエット効果を得るのが難しくなるでしょう。
もちろん、世の中には一晩絶食状態での朝の有酸素運動を習慣化できている人や、仕事や家族の都合で早朝にしか運動できない人もいます。
そうした方々は、無理のない範囲で朝の運動を続けることに焦点を当てるべきでしょう。
しかし、朝起きるのがつらかったり、朝の運動が苦手で結局すぐにやめたりしてしまう人は、運動中の脂肪燃焼が高い朝にこだわる必要はありません。
たとえ運動中に脂肪の燃焼量が少なくなったとしても、無理のない日中や夕方に運動をすることで、1日を通した摂取カロリーと消費カロリーの差を作ることができます。
結局のところ、朝にこだわるのではなく、自分に合った時間帯に運動を取り入れた方がダイエットを成功させる確率が高まるでしょう。
参考文献
Fasted Cardio May Mean You Use More Fat as Fuel, But Runners Need to Approach It Carefully
https://www.runnersworld.com/nutrition-weight-loss/a30277147/fasted-cardio/
元論文
Effects of post-absorptive and postprandial exercise on 24 h fat oxidation
https://doi.org/10.1016/j.metabol.2012.12.008
Planned morning aerobic exercise in a fasted state increases energy intake in the preceding 24 h
https://doi.org/10.1007/s00394-021-02501-7
ライター
髙山史徳: 大学では健康行動科学、大学院では体育学・体育科学を専攻。持久系スポーツの研究者として約10年間活動。 ナゾロジーでは、スポーツや健康に関係する記事を執筆していきます。 価値観の多様性を重視し、多くの人が前向きになれる文章を目指しています。
編集者
ナゾロジー 編集部