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月曜日は新しい週の始まりですが、「仕事が辛い」と感じる人にとって、それは本当に憂鬱な時です。
「また上司に怒られる日々がやってくる」「また忙しくて残業ばかりの日々がやってくる」「これからもこの辛さがずっと続くのだろうか」などと考えてしまう人が少なくないのです。
イギリスの保険組織が実施した2023年の研究では、月曜日は他の曜日に比べて13%も心臓発作のリスクが高いと報告しています。
多くの人は、身体に負の影響を及ぼすほどの憂鬱を月曜日に感じているのです。
同様の憂鬱は、新たな年が始まる「元旦」にも生じるかもしれません。
一部の人々にとって元旦は、ワクワクする時ではなく、「新たな地獄の始まり」なのです。
だからこそ、そのようなタイミングで「もう終わりにしたい」という感情が高まり、一線を越えてしまうことがあります。
世界保健機関によると、2019年に自死で亡くなった人は70万人を超えており、死亡者全体の約1.3%を占め、マラリア、HIV/エイズ、乳がんによる死亡者数を上回りました。
しかし自死は防ぐことのできる死因であり、そのためにも自死リスクについてより正確に把握することが大切です。
そこで今回、釜山大学校に所属するワンヒ・リー氏ら研究チームは、どのタイミングで自殺リスクが高まるのか、世界的な傾向を改めて調査することにしました。
研究チームは、健康・環境ストレス・気候変動などの分野における国際的なプロジェクト「MCC Collaborative Research Network」のデータベースから、26カ国740地点の自死データを収集しました。
このデータには地点別の毎日の自殺件数(合計170万1286件)が含まれており、研究チームは、ここから自死リスクが高まるタイミングを分析しました。
その結果、自死率は韓国、日本、南アフリカ、エストニアで最も高く、フィリピン、ブラジル、メキシコ、パラグアイで最も低いと判明。
また全ての国において、自死者数は女性よりも男性が多く、65歳以上よりも65歳以下で多いと分かりました。
やはり働いている世代の人々が自死を選択しやすいのです。
さらに全ての国において平日の自死リスクは、月曜日にピークを迎えており、自死者全体の15~18%がこの曜日に亡くなっていました。
月曜日に生じる憂鬱は、多くの人に一線を越えさせていたのです。
ちなみに、週末(土曜日や日曜日)の自死リスクに関しては国によって様々で、南米や南アフリカなどではリスクが高まるのに対し、アジアや北米、ヨーロッパではリスクが低くなりました。
そして1年を通して考慮すると、全ての国で元旦に自死リスクが増加しており、特に男性で顕著でした。
では、月曜日や元旦で自死リスクが高まるのはどうしてでしょうか。
研究チームは考えられる原因として、仕事のプレッシャーによるストレスや週末のアルコール消費率の上昇などを挙げています。
辛い仕事で悩んでいる人は「また地獄の日々が始まる」と絶望してしまうのです。
この憂鬱な気持ちに共感する人も少なくないでしょう。
またアルコールは脳の働きを抑制するため、お酒を飲んだ人は衝動的な行動を取ることが増えます。
そしてアルコールは一時的に気分を高揚させるものの、その後に気分の低下が生じるため、抑うつ症状を悪化させやすく、これが自死率を高めている可能性があります。
さらに週末や大晦日に一人で過ごさなければいけない場合、その孤独が「人生のむなしさ」を強く感じさせ、月曜日の憂鬱を強める場合もあるでしょう。
いずれにせよ、私たちの多くは月曜日や元旦などの「新たなスタートの日」に死にたくなるほどの苦しみを抱きやすいようです。
研究チームは、このようなデータを考慮して、自死防止計画を立てたり、啓発キャンペーンを行ったりすることで、少しでも世界から衝動的な自死を無くしたいと考えています。
参考文献
Suicide risk is higher on Mondays and New Year’s Day
https://www.scimex.org/newsfeed/suicide-risk-is-higher-on-mondays-and-new-years-day
元論文
Association of holidays and the day of the week with suicide risk: multicountry, two stage, time series study
https://doi.org/10.1136/bmj-2024-077262
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部