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北アメリカにある「ミシガン湖」は、五大湖のうちで唯一アメリカ領内にのみ位置し、面積は5万8016km2、最も深い場所の水深は281mにもなります。
日本最大の面積を誇る琵琶湖と比較すると、ミシガン湖の面積は86倍以上です。
そして、この広くて深い湖「ミシガン湖」には、ある「謎」が存在しています。
2022年、アメリカ海洋大気庁(NOAA)の研究者らが五大湖の湖底のマップを作成するため、ソナーを使って調査していたところ、ミシガン湖の底に奇妙な円形のくぼみを発見したのです。
そのクレーターのサイズは直径90~180mと大きく、研究者たちはこれが一体何なのか不思議に感じていました。
ミシガン湖保護区の管理者であるラス・グリーン氏は、この謎のクレーターに関して、「人工物というよりは自然のもののようだった」と語っています。
また同時期に行われた「沈没した貨物船の捜索」中(ミシガン湖の湖底には36隻の難破船が存在しており、さらに多くの難破船が沈んでいる可能性がある)にも、直径150~300mのクレーターが海底で複数見つかりました。
そこで研究者たちは、この謎のクレーターの秘密を暴くため、アメリカ海洋大気庁(NOAA)に属する五大湖環境研究所(GLERL)の科学者たちに連絡を取り、共同調査を計画しました。
そしてこの調査が実現したのが2024年8月であり、調査チームは、遠隔操作できる探査機を用い、ミシガン湖の湖底(ウィスコンシン州シボイガンの南東約22.5kmの地点)を改めて調べました。
その結果、彼らが確認できただけでも約40個ものクレーターの存在が明らかになりました。
とはいえ、GLERL研究員の1人は、「おそらく、もっと多くのクレーターが存在しているだろう」と語っています。
では、これら謎のクレーターはどのようにできたのでしょうか。
ミシガン湖の湖底に存在する40個のクレーターが、いつ、どのように形成されたかは、未だ明らかになっていません。
それでも研究者たちは、これらが陥没孔(またはシンクホール)かもしれないと考えています。
陥没孔とは、地下水による浸食、あるいは何らかの科学的な変化によって、地下にある岩石が崩壊し空洞が発生。
それが原因で、その上部の表層(ここでは湖底)も崩壊して穴が開いた状態を指します。
これは石灰岩など、水に溶解しやすい岩石で構成される地形で生じやすいとされています。
そしてミシガン湖の下には確かに石灰岩が多く存在しているため、これら謎のクレーターも「陥没孔」である可能性があります。
地下の岩石が崩壊した分、表層が落ち込み、大きなクレーターができてしまったというのです。
ちなみに、同じく五大湖の1つであるヒューロン湖では、過去の調査により、似たような湖底のクレーターが確認されており、それが陥没孔であることが分かっています。
もちろん、ミシガン湖の場合は、更なる研究が行われるまで「陥没孔」だと断定すべきではありません。
クレーターやくぼみの形成のメカニズムは様々だからです。
例えば、「謎のくぼみ」といえば、2023年のキール大学の研究では、北海の海底に存在する4万個もの小さなくぼみの「誰も予想しえなかった原因」が明らかになりました。
その犯人はネズミイルカであり、砂地に潜るイカナゴ科の魚を捕らえる時にできた「くぼみ」でした。
ミシガン湖の巨大なクレーターを同じようにイルカが作ったはずはありませんが、もしかしたらこの謎のクレーターの原因も「誰も予想しえないもの」かもしれません。
ミシガン湖の謎を明らかにする今後の研究に期待したいものです。
参考文献
Around 40 Circular Structures Confirmed To Be Stretching Under Lake Michigan
https://www.iflscience.com/around-40-circular-structures-confirmed-to-be-stretching-under-lake-michigan-76165
Scientists confirm there are 40 huge craters at the bottom of Lake Michigan
https://www.livescience.com/planet-earth/geology/scientists-confirm-there-are-40-huge-craters-at-the-bottom-of-lake-michigan
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部