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モーツァルト少年はまさに「神童」の名にふさわしく、息をするように作曲を続け、35年という短い生涯の間に延べ600曲以上の楽曲をこの世に生み出しました。
その膨大な数の楽曲から、モーツァルトの全作品は年代順に整理して番号を振った「ケッヘル目録」として整理されています。
この番号は「ケッヘル番号」と呼ばれ、KまたはKVで表記されます。
例えば、世界的に有名な『フィガロの結婚』は「K.492」です。
国際モーツァルテウム財団は昨年、ドイツのライプツィヒ市立図書館にて、モーツァルトの楽曲の完全なアーカイブであるケッヘル目録の最新版を編集していた際に、未発表の楽曲が記された譜面を発見しました。
この譜面自体はモーツァルト本人の手によるものではなく、1780年頃に作成された写本と見られています。
同財団のウルリッヒ・ライジンガー氏が中心となって調査を進めた結果、この譜面はモーツァルトの神童時代にあたる1760年代半ばから後半のどこかで書かれたものと判明しました。
その根拠となったのは、作曲者の署名欄に「ヴォルフガング・モーツァルト」と記されていたことです。
実はモーツァルトがミドルネームの「アマデウス」を使い始めるのは、1769年に初めてイタリアを訪問した後になります。
それまではミドルネームのない「ヴォルフガング・モーツァルト」を使っていました。
実際の譜面の画像はこちらからご覧いただけます。
この点を踏まえると、新たに発見された楽曲が作成されたのはモーツァルトが少なくとも13歳以前のことになります。
一部報道では「モーツァルトが9歳頃に作曲したもの」とも報じられました。
では、現代に蘇ったモーツァルトの失われた名曲を聴いてみましょう。
実際に音源を聴く前に、楽曲の内容を簡単に見ておきます。
この曲は2つのバイオリンとチェロで演奏される弦楽三重奏曲として書かれていました。
7つの短い楽章からなり、演奏時間は全部で約12分と短いです。
曲のタイトルは「ガンツ・クライネ・ナハトムジーク(Ganz kleine Nachtmusik)」と呼ばれており、ケッヘル番号は「KV 648」として正式に収録されています。
そして現代の演奏家たちによって蘇った曲がこちらです。
(※ 音量に注意してご視聴ください)
最初の演奏は先週19日(木曜日)にモーツァルトの故郷であるオーストリア・ザルツブルグで行われ、21日(土曜日)にはドイツ・ライプツィヒ歌劇場でも演奏されました。
そして24日(火曜日)には、日本国内で初となる演奏が東京で披露されています。
ライジンガー氏によると、初期のモーツァルト作品は主に、鍵盤作品やオペラのアリア(オペラの中で1人で歌われる独唱曲)、より壮大な交響曲(オーケストラによって演奏される多楽章の大規模な楽曲)が中心として知られていたため、このような弦楽三重奏からなる室内用の小品は非常に珍しい、とのことです。
そのため、モーツァルトが自らのスタイルを確立する以前の音楽を聴ける点でとても貴重であるとライジンガー氏は指摘します。
しかし10歳前後でこのような音楽を生み出せるなんて、やはり「神童」と呼ぶしかありませんね。
参考文献
Lost Mozart Manuscript Discovered in Leipzig, Dating Back to His Childhood
https://www.zmescience.com/science/news-science/lost-mozart-manuscript-discovered-in-leipzig-dating-back-to-his-childhood/
Previously unknown Mozart music discovered in German library
https://www.theguardian.com/music/2024/sep/19/previously-unknown-mozart-music-discovered-in-german-library
Previously Unknown Mozart Composition Turns Up in a German Library
https://news.artnet.com/art-world/unheard-mozart-composition-manuscript-found-leipzig-2540432
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部