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猫との暮らしも、健康に大きな影響を与えることがわかっています。
猫との触れ合いは、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を抑制し、リラックス効果をもたらします。(Pendry et al., 2019)
一方、鳥や魚といった他のペットも、精神的な癒しやストレス軽減効果が報告されています。
例えば、魚を眺めることで、血圧や心拍数を安定させ、リラックス状態をもたらすこと。(Cracknell et al., 2015)
鳥のさえずりを聴くと、心の落ち着きや幸福感が増すことがわかっています。(Hammoud et al., 2022)
しかし、犬や猫に比べ、魚や鳥といったペットについては、健康への具体的な影響を調べた研究がまだ十分に行われていないのが現状です。
そこで、研究チームは、オーストラリアの全国的なデータを使い、犬や猫に限らず、鳥や魚など他のペットも含め、ペットとの暮らしが死亡リスクにどのような影響を与えるか調査しました。
今回の研究では、オーストラリアの「HILDA調査」に基づき、15,000人以上の人々を4年間追跡しました。
(※HILDA調査:オーストラリア国民の世帯構成、収入、労働状況、健康などを毎年追跡する全国的な長期パネル調査)
追跡期間中に観察された、あらゆる原因による死亡リスク (全死亡率) を評価し、ペットとの暮らしが全死亡率に与える影響を分析しました。
また、年齢、性別、収入、健康状態などの要因を考慮し、ペットとの生活が純粋に、全死亡率にどのような影響を与えるか明らかにしています。
その結果、ペットと暮らしていない人と比べて、ペットと暮らす人の全死亡率は26%も低下することが判明しました。
特に、犬と暮らす人の全死亡率は23%減少することが確認されました。
さらに、調査結果によると、犬と暮らす人は週に平均30分以上の運動を行っていることがわかりました。
この運動習慣が、心血管疾患の予防や体重管理に貢献し、結果として全死亡率の低下につながっていると考えられます。
一方、猫や鳥、魚を飼っている人たちも、全死亡率が低下しているように見える結果が出ましたが、犬ほどの明確な効果は確認されませんでした。
これについて、犬以外のペットは、身体的な運動量が増えることは少なく、全死亡率に対する効果に差が出たと考えられます。
しかし、一部の研究では、猫の飼い主が犬の飼い主よりも特定の心血管疾患の発症リスクが低いという結果も示されています。(Ogechi et al., 2016)
この違いについて、さらに研究が進めば、ペットの健康効果に関する、より明確なメカニズムが解明できる可能性があります。
今回の研究は、犬との暮らしが運動の習慣化を促し、全死亡率の低下に寄与する可能性を示していますが、直接的な因果関係を証明しているわけではありません。
また、今回の研究では死因に関するデータを利用することができませんでした。
そのため、ペットの飼育と特定の死因を関連づけるより詳細な解析には、さらに長期間の追跡調査が必要になります。
しかし、犬以外にもペットを飼うことが死亡率の低下に寄与する可能性は十分にあります。
魚を眺めることによる血圧や心拍数の安定、鳥のさえずりによる幸福感の増加など、これらの効果が健康を改善し、間接的に寿命延長につながる可能性も考えられます。
その効果を最大限に引き出すためには、定期的な運動や健康管理を意識した生活を心がけることが重要かもしれません。
これを機会に、もしペットと暮らしているなら、毎日の散歩や運動をもう少し多くしてみてはいかがでしょうか。
健康の向上や、ペットとの絆がさらに深まるかもしれませんね。
参考文献
伴侶動物との生活と死亡リスク猫、鳥、魚ではなく犬との生活が死亡リスクを抑制
https://www.nies.go.jp/whatsnew/2024/20240822/20240822.html
元論文
Dog, cat, bird, fish, and other pet ownership and mortality: Evidence from the HILDA cohort
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0305546
ライター
岩崎 浩輝: 大学院では生命科学を専攻。製薬業界で働いていました。 好きなジャンルはライフサイエンス系です。特に、再生医療は夢がありますよね。 趣味は愛犬のトリックのしつけと散歩です。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。