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ルイス・フィリペは王族として順調に成長しましたが、父カルロス1世の治世は実に不安定なものでした。
というのもカルロス1世は財政運営がいい加減であったり、国内の共和派に対して弾圧的であったり、私生活で不倫のスキャンダルがあったりと、国民にとにかく不人気だったのです。
また1892年6月14日および1902年5月10日の2度にわたって財政破綻を宣言しており、これが産業への混乱を招いて、国民による強い王制批判を呼びました。
そして溜まりに溜まった民衆の鬱憤がついに爆発するときが来たのです。
1908年2月1日、カルロス1世と王族たちは馬車に乗り、宮殿からリスボンへ帰還の途についていました。
一行がリスボンの繁華街を通り、王宮に向かっていたそのとき、コメルシオ広場を通り過ぎたあたりで群衆から飛び出てきた2人の男に銃撃されたのです。
この2人は急進的な共和主義者であったそうで、ただちに護衛によって射殺されています。
しかしカルロス1世は銃弾を受けて即死。同乗していたルイス・フィリペも重傷を受けました。
カルロス1世が亡くなった時点で、国王の座はルイス・フィリペに移譲されたわけですが、不幸なことに彼が負った傷も致命的なものでした。
ルイス・フィリペは父カルロス1世が亡くなった20分後に命を落としています。
のちに、このわずか20分間がルイス・フィリペの国王としての在位期間とみなされ、ギネス世界記録にも「史上最も在位期間が短かった国王」として記録されることになったのです(Guiness World Record)。
専門家の中には「正式な即位式を経たわけではないので、ルイス・フィリペを国王と見るかは疑わしい」との意見もありますが、彼が王位継承権を持っていた以上、父が亡くなった時点で国王の権利を持つと見ることもできます。
ただ当のルイス・フィリペは自分が王様だったなんて意識は微塵もなかったでしょう。
結局、ルイス・フィリペの死後は彼の弟であるマヌエルが国王の座についています。
では彼とは逆に、史上最も在位期間が長かった国王は誰になるのでしょうか?
ルイス・フィリペの対極である「史上最も在位期間が長かった国王」の称号は、ソブーザ2世(1899〜1982)に与えられます。
ソブーザ2世は、アフリカ南部にあるスワジランド(現在はエスワティニと呼ぶ)の第7代国王でした。
彼は1899年に、父王ヌグワネ5世の王太子として生まれますが、すぐに父が亡くなってしまったため、なんと生後4カ月で正式に国王として即位します。
当然ながら赤ちゃんに国を統治する術はありませんから、成人するまでは祖母のラボツィベニ・ムドルリが摂政(せっしょう)として国務を代行しました。
その後、立派に成人を果たしたソブーザ2世は1968年に宗主国であったイギリスからの独立を宣言。
イギリスから正式にスワジランド国王として承認されています。
ソブーザ2世は政情不安なアフリカでは異例の長期政権を築き、1982年8月21日に亡くなるまで国王であり続けました。
その在位期間は実に82年と254日間だったと言われています。
この記録は公式に確認できる限りでは有史以来、世界最長の在位記録となっています。
20分と82年、同じ国王でも歩んだ道のりは真逆だったようです。
参考文献
The shortest reign of any monarch lasted just 20 minutes.
https://historyfacts.com/world-history/fact/the-shortest-reign-of-any-monarch-lasted-just-20-minutes/
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部