ある期間、一生懸命トレーニングを頑張ると、体力は高まり、健康的にもなります。

しかし、そこで満足してしまい、時間が経つとともにモチベーションを失い、日々の忙しさも相まって、トレーニングをやめてしまう人も多いです。

残念な事実ですが、トレーニングを完全に辞めてしまうと、身体はトレーニングをする前の状態にまで徐々に戻ってしまいます。

ただ、トレーニングをする頻度をだいぶ落としても、たまに実施さえすれば、意外と何とかなるようです。

ギリシャ・アテネ大学(National and Kapodistrian University of Athens)の研究グループが最近発表した研究によると、週に1回でもトレーニングを続けると、一度得た効果を維持できることが明らかになっています。

さらに興味深いことに、この研究は、2週間に1回という少ない頻度でも、一度得た効果の90%以上を保てることを示しています。

これらの結果は、半月に1回といったとても低い頻度であっても、トレーニングを続けるメリットが大きいことを示しています。

今回の研究成果は、学術雑誌『Sports』に2024年7月22日付で公開されました。

目次

  • 運動を完全にやめてしまうのはもったいない
  • 2週間に1回のトレーニングでもだいたい維持できる

運動を完全にやめてしまうのはもったいない

運動好きな人にとっては当たり前のことかもしれませんが、有酸素運動を続ければ心肺機能が高まり、筋トレを続けると筋力が向上します。

また、こういったトレーニングを継続することで、心身ともに健康的になり、日常生活でもエネルギッシュに過ごせるようになるでしょう。

しかし、一度頑張って高めることができた体力であっても、トレーニングを完全に辞めてしまうと、その効果は徐々に消えてしまい、最終的には、元のレベルにまで戻ってしまいます

このことを可逆性の原理と言いますが、せっかく頑張ったのに、トレーニングを始める前の状態まで戻ってしまうのはもったいないことです。

もちろん、なにかとやることの多い現代社会では、高い頻度でトレーニングをし続けることは大変ですが、その頑張りが無駄にならないようにするためには、どの程度まで頻度を落としても良いのか知ることが重要です。

今回、研究グループは、12週間にわたり週2回のトレーニングを続けた人たちを次の3つのグループに分け、その後の変化をトレーニングの頻度の観点から詳しく調べました。

・毎週トレーニング群(週1回)
・隔週トレーニング群(2週に1回)
・脱トレーニング群(0回)

具体的には、最初の12週間は全グループが週2回、レッグプレスと自転車エルゴメーターを組み合わせた1時間のトレーニングを行いました。このトレーニングは、心肺機能と筋力をバランスよく鍛えることを目的としたものです。

レッグプレスは下半身の大きな筋肉を鍛えることが出来る種目 / Credit: 写真AC

その後、毎週トレーニング群は週1回、隔週トレーニング群は2週に1回の頻度に落とした上で、同じトレーニングをさらに12週間継続しました。一方、脱トレーニング群は、全くトレーニングを行いませんでした。

なお、最初の12週間は徐々に運動強度(重さ)を高めましたが、その後の12週間は運動強度を維持するのみで、さらに高めることはありませんでした。

果たしてどんな結果になったのでしょうか?

2週間に1回のトレーニングでもだいたい維持できる

まず、3つのグループともに週2回の頻度でトレーニングを続けた12週間後には、心肺機能、筋力、筋肉量が増加しました。これは、トレーニングをしっかり続けた成果で、当然のことです。

次に、その後の12週間の結果を見ると、週1回に頻度を減らしても続けたグループは、その効果をほとんど維持できていました。また、後半の12週間で合計6回しかトレーニングを行わなかった隔週グループも、少し効果を失いましたが、それでも獲得した効果の90〜95%は維持できました。

一方、トレーニングを完全にやめたグループは、12週間のトレーニングで得た効果をほとんど失い、トレーニングを始める前の状態にまで戻ってしまいました。

これらの結果から、トレーニング効果をどれほど維持できるかどうかについて、トレーニングの頻度は単純な直線関係ではなく、全くやらないか、2週間に1回でもやるのかでは大きな違いがあることがわかりました。

トレーニングをはじめた当初は、多くの人が健康のために筋肉量を増やしたい、体脂肪を減らしたいなどといった高い意欲を持って、時間を割いて取り組むことができます。

また、トレーニングの初期は筋力や持久力の成長を実感しやすいこともあり、自己満足感や達成感を感じやすいです。

一方で、スポーツ庁の調査結果によると、1日30分以上の軽く汗をかく運動を週2回以上実施し、1年間継続している運動習慣者の割合は30%を下回っています。

これは、多くの人が最初のモチベーションを維持するのに苦戦し、運動を習慣化できないことを示唆しています。

運動の習慣化は難しい、ならば運動へのハードルを下げることが有効 / Credit: 写真AC

ただ、今回の研究結果を踏まえると、運動習慣者と呼べないレベルの2週間に1回といった少ない頻度でも、全く運動しないよりははるかに良いです。

長い人生において、常に右肩上がりで体力や健康度を向上させることは現実的ではなく、特に忙しい時期やモチベーションが低下している時期には、トレーニングへのハードルを下げながら、体力の維持もしくは低下を最小限にとどめるだけでも意味があります。

その意味で、頻度が減ったとしても、完全にやめてしまうよりは、半月に1回でも運動を続けることが健康であるために大切と言えるでしょう。

トレーニングへのモチベーションを見失っている人は、頻度を落とすなど、運動へのハードルを下げてみてはいかがでしょうか?

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参考文献

Study Shows That Just One Training Session a Week Can Prevent Loss of Muscle Mass and Strength
https://www.menshealth.com/uk/building-muscle/train-smarter/a61860821/one-training-session-a-week-can-prevent-muscle-loss/

スポーツ庁(2024)令和5年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/sports/1415963_00012.htm

元論文

Effect of Different Reduced Training Frequencies after 12 Weeks of Concurrent Resistance and Aerobic Training on Muscle Strength and Morphology
https://doi.org/10.3390/sports12070198

ライター

髙山史徳: 大学では健康行動科学、大学院では体育学・体育科学を専攻。持久系スポーツの研究者として約10年間活動。 ナゾロジーでは、スポーツや健康に関係する記事を執筆していきます。 価値観の多様性を重視し、多くの人が前向きになれる文章を目指しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 「完全にやめるのは損!」運動効果は2週間に1回でもかなり維持できる