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そこで研究チームは今回、顔の魅力度がその後の人生の寿命にどんな影響を与えるのかを理解すべく、ウィスコンシン縦断研究(WLS)をデータセットとして利用しました。
ウィスコンシン縦断研究(WLS)とは、1957年に米ウィスコンシン州の高校を卒業した人々を生涯にわたって追跡した調査のことです。
この大規模データセットには、死亡するか、あるいは80代前半まで追跡された計8386名の卒業生たちのデータが含まれています。
チームはこのデータと卒業アルバムを使って、顔の魅力度と寿命の関連性を調べることにしました。
本調査では卒業アルバムの顔写真をもとに、専門的な訓練を受けた6名の評価者がそれぞれの顔の魅力度を11点満点で評価しました。
他人の意見に左右されないよう、6名の評価者は単独で評価を行い、あとでそれらをまとめて、顔の魅力度の平均スコアを算出。
そのスコアに従って、魅力度の高い方から低い方まで6つのグループに分けられています。
その後、それぞれの卒業生たちの学業成績やIQ、家庭環境、成人後の収入、健康状態などの因子を調整した上で、顔の魅力度と寿命との関連性を調べました。
その結果、魅力度の最下位グループに属していた人は、その他のグループに比べて、寿命が有意に短くなる傾向が見つかったのです。
具体的には、魅力度が平均〜高いと判定された人々に比べて、死亡リスクが16.8%も高くなっていました。
しかし興味深いことに、最も魅力度が高いと判定されたグループと最下位を除く4つの平均的なグループとの間では、寿命の長さに有意差は見られなかったのです。
このことは顔の魅力度が低いことは寿命の短さと確かに関連するものの、顔が魅力的であることに寿命を伸ばす効果はないことを示しています。
つまり、美男美女だからといって寿命が長くなることはないのです。
この結果は、美男美女や魅力が高い外見である必要はないものの、平均以下の極端に魅力が低い人たちは、寿命が短くなる可能性を示しています。
この関連性は学業成績やIQ、家庭環境、成人後の収入、健康状態を踏まえた上でも変わりませんでした。
一方で、今回の調査には限界点もあると研究者たちは指摘します。
例えば、サンプルがウィスコンシン州の高校生のみで構成されていることや、非ヒスパニック系の白人が多くを占めており、同じ結果を他の人種にも当てはめることができない点などです。
また、そもそも卒業アルバムの顔写真の質や写真写りにばらつきがあり、これだけをもとに個々人の顔の魅力度を正確に評定することは難しいと考えられます。
チームは今後の調査で、これらの難点を改善した形で改めて同じ効果が確認できるのかを検証したいと考えています。
それから例え同じ結果が確認できたとしても、見た目の魅力度は今や自己の工夫や努力次第で大きく変えられる部分です。
整形に頼らずとも、髪型やメイク、服装などの身だしなみで顔の印象はガラリと変わりますし、筋トレやダイエットによるボディメイクで相手に与える見た目の印象も大きく高められます。
加えて、他者との社会交流を円滑にするには、外見だけでなく、中身のよさが重要なのは言うまでもないでしょう。
なので現段階では「こういう研究報告もあるんだな〜」と思っておくくらいがちょうどいいのかもしれません。
参考文献
Can your high school yearbook photo predict your longevity? New research has surprising answer
https://www.psypost.org/can-your-high-school-yearbook-photo-predict-your-longevity-new-research-has-surprising-answer/
元論文
Looks and longevity: Do prettier people live longer?
https://doi.org/10.1016/j.socscimed.2024.117076
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部