子供の頃、レゴブロックで遊んだ人は多いでしょう。

もしかしたらその経験は、今後、月面に家を建てる際役立つかもしれません。

最近、欧州宇宙機関(ESA)は、レゴ(LEGO)グループと協力して、45億年前の隕石の塵を使って3Dプリントしたレゴブロックを開発しました。

これらのブロックは、月面建設の基礎材料として研究されており、将来、月面や惑星での建設に役立つかもしれません。

目次

  • 月での建設に役立つのはレゴブロック!?
  • 45億年前の隕石の塵からレゴブロックを作成

月での建設に役立つのはレゴブロック!?

NASAが主導する月探査計画「アルテミス計画」では、2024年以降に人類を再び月面に送ることを目指しています。

また将来的には、月面拠点の建設、人類の持続的な月面居住も視野に入れています。

そして、この壮大なアルテミス計画は国際的な協力の下で進行しており、欧州宇宙機関(ESA)をはじめとする多くの宇宙機関が参加しています。

月面での生活。イメージ / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

では、将来的に人間が月面で生活することなど可能なのでしょうか。

当然ですが、これから数多くの課題をクリアしていかなければいけません。

その1つは、「月面での建設をどのように行うか」という点です。

月の表面は温度差が極端で、大気や磁場が無いことから、降り注ぐ放射線量も高くなっています。

また、重力が地球の約1/6しかないため、建築材料(建材)や建築方法も地球とは異なるアプローチが必要でしょう。

加えて、そもそも月面でどのように建材を入手するのか、という疑問もあります。

地球から建材をロケットで運ぶこともできますが、それには膨大なコストがかかるため、あまり賢い方法ではありません。

そこで今回、ESAが着目したのが、誰もが知っているブロック玩具「レゴ」です。

ブロック玩具「レゴ」 / Credit:Wikipedia Commons_レゴ

レゴは、1949年にデンマークで誕生したプラスチック製ブロック玩具で、今や世界中で愛されています。

レゴブロックは非常にシンプルなデザインですが、その高い互換性と無限とも言える組み合わせから、子供の創造力を刺激し、教育的なツールとしても広く利用されています。

そしてレゴの最大のメリットは、「簡単に組み立てや分解ができること」と、その「頑丈さ」にあります。

これらの特性は、実際の建設プロジェクトでも役立ち、月面建設のシミュレーションに利用できるかもしれません。

そこでESAはLEGOグループと協力して、宇宙の建材として役立つ「隕石由来のレゴブロック」を開発することにしました。

45億年前の隕石の塵からレゴブロックを作成

月の表面は、「月のレゴリス」と呼ばれる「岩石由来の細かな砂」に覆われています。

ESAの科学者たちは、月まで建材を運ぶのではなく、月に行き、その場で月のレゴリスを使って建材を作る方法を考えました。

そしてこの方法をまず地球で検証するためには、大量の月のレゴリスが必要になります。

しかし、実験に十分利用できるほどの月のレゴリスは、地球上に存在しません。

45億年前の隕石の塵を使用 / Credit:lego_Space Bricks: How LEGO® Bricks Are Helping Scientists Build on the Moon

そこで科学者たちは、月のレゴリスに一番近い物質として、「隕石の塵」を使って実験することにしました。

この隕石は2000年に北西アフリカで発見されたもので、約45億年前のものだと考えられています。

地球で発見されたその隕石の塵には、金属粒子やコンドリュール(ケイ酸塩鉱物を主成分とした粒子。多くの隕石に含まれる)などの宇宙材料が詰まっています。

ESAの科学者たちは、この塵を少量の「ポリ乳酸(微生物で分解できるプラスチック)」や「レゴリス類似材料(NASAが開発した月や惑星の塵に似た物質)」と混ぜ、レゴブロックの形状に3Dプリントしました。

隕石の塵から作ったレゴブロック。表面はやや粗い / Credit:The LEGO Group_The space bricks have landed!(2024)

出来上がったレゴブロックは、表面がやや荒く、見た目もグレー1色であり、かなり武骨なイメージです。

しかし、従来のレゴブロックのように、ブロック同士を簡単にカチッとはめたり外したりできます。

ESAの科学者であるエイダン・カウリー氏は、この未来の宇宙建材について次のようにのべました。

「私たちは、クリエイティブな建築が大好きで、宇宙の塵から作ったレゴブロックで建築技術のテストを行うというアイデアを思いつきました。

大切なのは、遊びながらデザインのテストを行えるという点です」

将来、月面で使用する建材となるか / Credit:The LEGO Group_The space bricks have landed!(2024)

そしてLEGOグループのダニエル・ミーハン氏も次のよう述べています。

「今回のことで、子供たちがレゴブロックで遊ぶことには無限の可能性があると分かりました。

これをきっかけに、子供たちが自分だけの宇宙シェルターを作ることできるようになることを願っています

隕石で作られたレゴブロックが展示中 / Credit:ESA Extras(YouTube)_ESA x LEGO space bricks(2024)

ちなみに、今回のプロジェクトで作られた「隕石の塵のレゴブロック」は、アメリカ、イギリス、デンマーク、オーストラリアなどの一部のレゴストアで展示されることになりました。

展示期間は2024年6月24日から9月20日までです。

この展示は、子供たちに宇宙旅行について興味を持たせ、「自分たちの月面シェルターを作る」という夢を育ませることでしょう。

もしかしたら将来、レゴブロックで遊んだ子供たちが宇宙飛行士となり、月面で作られた巨大なレゴブロックで家を建てるなんてこともあるのかもしれませんね。

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参考文献

The space bricks have landed!
https://www.esa.int/About_Us/Branding_and_Partnerships/The_space_bricks_have_landed

Space Bricks: How LEGO® Bricks Are Helping Scientists Build on the Moon
https://www.lego.com/en-us/space/article/lego-space-bricks-moon?icmp=TH-SHH-XL-themes_space_about_hb_spacebricks-TH-NO-Y0514P9KEG

space scientists 3D print LEGO bricks with meteorite dust to build astronaut homes on moon
https://www.designboom.com/technology/space-scientists-3d-printed-lego-bricks-meteorite-dust-moon-esa-european-agency-06-25-2024/

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

情報提供元: ナゾロジー
記事名:「 材料は45億年前の隕石!レゴブロックで月面基地を作る計画