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そこでプレゼンティーズムを予防・改善する方法がぜひとも必要になるわけですが、従来の調査ではプレゼンティーズムの客観的な評価が難しく原因が明確にならないため、効果的な改善法もいまだに確立されていません。
従来の調査は、質問票を用いて数週間または数カ月おきにプレゼンティーズムの自覚症状を「思い出してもらう」という主観的な方法に頼っていました。
これでは、思い出しのバイアスにより客観性が低下したり、評価期間がざっくりとし過ぎているため、プレゼンティーズムの発生や悪化に関係する心身状態の要因がなかなか特定できません。
そこで研究チームはスマホアプリや身体活動計を用いた新たなプレゼンティーズムの調査方法を導入しました。
チームが今回用いたのは「エコロジカル・モメンタリー・アセスメント(生態学的経時的評価:EMA)」という方法です。
ここでは、チームが独自開発したスマートフォンアプリと身体活動量計を利用して、被験者の日々のプレゼンティーズムの変化を測定しました。
具体的には、56名の健康な成人男女を対象とし、先の専用アプリを用いて、その時々の心身の自覚症状(例えば、抑うつ気分や不安感、ストレス、疲労度、眠気、肩こりなど)を1日につき5回答えてもらいます。
仕事終わりには、その日のプレゼンティーズムを問う質問「今日の仕事のパフォーマンスはどうでしたか?」などにも回答してもらい、作業効率の高さを記録しました。
それから身体活動量計では、日々の睡眠時間や睡眠の質を記録することで体の正直な反応をモニタリングします。
また調査終了時には、国際的に広く使用されている「健康と労働パフォーマンスに関する質問紙(WHO-HPQ)」を用いて、調査期間全体のプレゼンティーズムも評価しました。
そしてデータ分析の結果、これまでの調査方法では把握されていなかったプレゼンティーズムの日々の変化、それも特に「一時的なプレゼンティーズムの悪化」があることの特定に成功しました。
さらに、そうしたプレゼンティーズムの発生や悪化には「日中の抑うつ気分の高さ」「ひどい肩こり」「前日の睡眠時間の不足」が最も大きな要因として関連していたことがわかったのです。
仕事に集中できないことが多いという方は、この結果を聞いて心当たりがあるかもしれません。
日中の抑うつ気分はさらに他の要因が関わっていそうなので、容易に解消できないと考えられますが、肩こりや寝不足など対処可能な問題については、解消させればプレゼンティーズムを効果的に予防したり改善できる可能性があります。
研究者らは今後、この知見を活用することで、日々のプレゼンティーズムや労働生産性の改善に向けた効果的な介入や指導の確立につながることを期待しています。
参考文献
出勤しているけれど業務効率が上がらない? 日々のプレゼンティーズムを左右する心身状態を解明
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2024/20240620_2
元論文
Daily Associations Between Presenteeism and Health-Related Factors Among Office Workers: An Ecological Momentary Assessment Approach
https://journals.lww.com/joem/abstract/9900/daily_associations_between_presenteeism_and.593.aspx
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部