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古くから人間のパートナーであるイヌたちは、様々な仕事に就いて人間を助けています。
中でも特に過酷なのが、軍事目的のために訓練された「軍犬」かもしれません。
彼ら軍犬や警察犬は、「K9」という名で呼ばれることがあります。
この名は、イヌ科を意味する英語「Canine(ケイナイン)」に由来しており、音に合わせて「K9」という当て字が使用されるようになりました。
そのためK9は「イヌ」そのものを示すこともありますが、現在では働く犬の代名詞として使用されており、軍犬や警察犬に当てはめることが多いようです。
例えば、イギリスでは、警察犬チームが「K9ユニット」と名付けられており、その優れた嗅覚を利用して違法薬物を発見します。
また凶悪犯罪の容疑者を見つけて逮捕する警察犬もおり、危険と隣り合わせの中、命を懸けて任務を遂行することもあるようです。
軍犬にもなると、国によってはさらにハードな任務を遂行します。
例えば、強襲作戦に同行して敵の追跡や制圧を行ったり、軍事施設や国境を警備したりします。
また爆発物を発見し、ハンドラー(調教師・訓練師)に危険を知らせる仕事を担うこともあります。
そんな警察犬や軍犬の役目を考えると、人間たちがフル装備なのに対し、K9たちが丸腰なのはなんとも不思議な話です。
そこでDark Systems社は、警察犬や軍犬を保護するヘルメット「DarkFighter K9 GEN4」を発表しました。
任務を遂行するK9たちは、このヘルメットを装着することで、頭部への衝撃を緩和させることができます。
特に敵の制圧を行う場面では、相手の反撃が予想されるため、ヘルメットによって致命傷を避けることが重要です。
また災害現場など、瓦礫や破片が落ちてくるような危険な環境で働くイヌたちにとっても助けとなります。
そしてこのヘルメットは樹脂製であり、軽量化に重きをおいて作られているため、イヌたちの機動力を損なうことはありません。
同時に目を保護するゴーグルと耳用の聴覚保護具も備わっています。
Dark Systems社によると、ゴーグルによって「ほこりやレーザーなど、あらゆるものからイヌたちの目を保護できる」ようです。
聴覚保護具ではイヌたちの聴覚を大きな音から守ることができます。
銃器や爆発物が扱われる戦場では、イヌたちの敏感な聴覚を保護する必要があるのでしょう。
加えてヘルメットにはLEDライトを装着することも可能であり、暗闇でも周囲を明るく照らすことが可能です。
ただし、イヌはもともと夜行性であり、暗闇でも人間の5倍はよく見えていると言われているため、このライトの必要性にはいくらか疑問が残ります。
もしかしたら、イヌたちと行動を共にする人間たちにとって、この明かりが役立つのかもしれません。
さらにヘルメットには、カメラやスピーカーが搭載されており、イヌ目線の映像を保存したりハンドラーに送信することも可能です。
また、ヘルメットの前面には、鼻先用の保護具や口輪を取り付けること拡張性もあるそうです。
こうしたヘルメットが実際にどこまで役に立つのかは分かりませんが、危険な環境で働くイヌたちには、少しでも安全な保護具が提供されて欲しいものです。
とはいえ、戦場でのダメージは身体的なものだけではありません。
訓練された軍犬であっても、人間の兵士たちと同様、強いストレスによってPTSDで心に傷を負うイヌたちがいます。
これらイヌたちにとって、人間が提供できる最大の安全とは、そもそも「戦争に参加させない」ことなのは言うまでもありません。
参考文献
Photos: New helmet to shield military dogs in the line of duty
https://interestingengineering.com/photo-story/photos-new-helmet-to-shield-military-dogs-in-the-line-of-duty
K9 GEN4 ‘hel-mutt’protects action dogs
https://newatlas.com/military/k9-gen4-hel-mutt-doggs/
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。