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こうした画像を使い、実験参加者の大学生に2つの異なるタスクに取り組んでもらいました。
1つはランダムに提示された顔画像のペアについて、白色系アメリカ人か中国人かというように「人種のアイデンティティ」を振り分けてもらうタスク。
もう1つはランダムに提示された顔画像について、「知性・信頼性・魅力度・健康さ・仕事面での成功可能性」といった社会面での評価をするタスクです。
1つ目のタスクの結果、参加者は自分たちの人種に寄せて顔画像を認識する傾向が強いことが判明しました。
例えば、白人の大学生なら、さまざまな割合でブレンドされたハーフ顔を白色系のアメリカ人と認識しやすく、反対に中国人の大学生はハーフ顔をアジア系の人種だと認識しやすくなっていました。
そして2つ目のタスクでは、白人と中国人の大学生はどちらも一貫して、単一人種の顔画像よりもハーフ顔を魅力的に感じ、知性や信頼度といった社会面で高く評価する傾向が示されました。
ここで興味深い点は、観察者の人種に近い顔ではなく、人種間で中立的な顔がもっとも高く評価されたという部分です。
つまり、白色系のアメリカ人だからといって100%白人の顔を、中国人だからといって100%アジア人の顔を高く評価するわけではなく、ともに両人種が混じったハーフの顔が最も魅力的だと評価されたのです。
日本ではよく、ハーフの人を美形と認識する傾向がありますが、これは日本固有のことではなく、人種の垣根を越えて、ハーフ顔は広く魅力的に認識されやすいことを示唆しています。
では、なぜハーフ顔は魅力的と認識されるのでしょうか?
ハーフ顔が魅力的に見える理由について、研究者は顔の知覚における”平均効果(average effect)”に起因する可能性があると指摘します。
研究者が言及する”平均効果”とは、多数の顔の特徴を平均化して生成された「平均顔」が個々の実際の顔に比べて、親しみやすく、魅力的に見えやすい効果を指します。
平均顔の研究は何十年も前から行われており、1990年にはすでに米テキサス大学オースティン校(UT Austin)によって、平均顔は個々の顔よりも美しく魅力的に見られやすいことが報告されています。(Psychological Science, 1990)
個々の顔に見られる強い特徴はネガティブな要素として認識されやすく、これが平均化によって薄れることが、顔知覚における平均効果の原因だと考えられます。
例えば、高すぎる鼻や太すぎる眉毛、大きすぎる目といった強い個性が中和されて、バランスの取れた顔になるのです。
これを踏まえると、今回のハーフ顔の研究についても、白人とアジア人の強い個性が程よく中和されたために、どちらの人種からも好ましく魅力的に見えるようになったと考えられます。
そして、こうした顔の好ましさや魅力度が、知性や信頼性といった社会面の評価の高さにもつながっているのでしょう。
アジアやヨーロッパといった人種に特有の顔立ちが、異人種間の交流や理解の妨げになることがありますが、ハーフは社会心理的に人種の垣根を超えて2つの異なる文化をつなぐ存在となるかもしれません。
参考文献
Evolutionary psychology study finds biracial individuals are perceived more positively across cultures
https://www.psypost.org/evolutionary-psychology-study-finds-biracial-individuals-are-perceived-more-positively-across-cultures/
元論文
Biracial Faces Offer Visual Cues of Successful Intergroup Contact: Genetic Admixture and Coalition Detection
https://doi.org/10.1177/14747049241238623
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。