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各セッションはビデオで記録され、参加者がプレッツェルを食べた量や食べた時間、食べるスピードや噛む回数、一口の大きななどを調べています。
データ分析の結果、プレッツェル1個分のサイズは参加者の摂食行動に大きく影響することがわかりました。
最終的に食べた量の平均を見ると、小サイズで約12.9グラム、中サイズで約13.8グラム、大サイズで約16.9グラムと、1個分のプレッツェルが大きくなるほど食べる量も増えていたのです。
特に大サイズは中サイズに比べて22%、小サイズに比べて31%も食べる量が多くなっていました。
ビデオ映像を観察してみると、大サイズのプレッツェルを食べた参加者は1口分が大きくなり、他のサイズに比べて食べるスピードが速くなっていたため、最終的な摂食量も増えたと考えられます。
反対に、1個分のプレッツェルが小さくなるほど、全体的な食べるスピードが遅くなり、摂食量も減っていました。
この結果について研究主任のジョン・ヘイズ(John Hayes)氏は、お菓子1個分のサイズを変えることで、間食の取り過ぎを適切に調節することが可能になると話します。
「私たちの研究では、お菓子のサイズを変えることで、摂食行動や摂食量を調節できることが示唆されました」
またサイズの他に形や食感など、食品の素材特性をうまく活用すれば、間食を取ることの楽しみに影響することなく、摂食量を減らすことができるかもしれないと考えています。
ところが一方で、サイズの大小に関わらず、塩分の摂取量には変化がありませんでした。
食べた量が変化したと言っているのに、これはなぜなのでしょうか?
先の実験の結果、サイズの大小によって摂食量は変化したものの、全体的な塩分摂取量に変わりはありませんでした。
参加者は食べた量が減っていた小サイズのプレッツェルでも、食べた量が多かった大サイズと同程度の塩分を摂取していたのです。
ヘイズ氏によると、これはお菓子の表面積に関係があるといいます。
お菓子1個分を小さくすると、大サイズに比べて表面積が大きくなるので、表面についた塩分の量が多くなり、結果として小サイズで塩分摂取量が増えていたのです。
これでもし大サイズと同じ量を食べていたら、小サイズを食べた人の方が塩分摂取量は多くなってしまう考えられます。
これを受けて、同チームのマデリン・ハーパー(Madeline Harper)氏は、自分の目的意識に合わせてお菓子のサイズを変えるといいかもしれないと提案しました。
「例えば、お菓子を食べる量を減らしたり、カロリー摂取量に気をつけたいのであれば、1個分が小さなサイズが適切と考えられます。
しかし、塩分の摂り過ぎや高血圧を気にしているなら、1個分が大きなサイズの方が塩分摂取量は少なくて済むでしょう」
現代人は間食を取る習慣がとても多くなっています。
特にコロナ禍のステイホームにより、人々の間食の量や回数が増えていることがわかっており、そのせいで体重増加や高血圧の人がコロナ以前に比べて増加しました。
間食をまったくやめる必要はありませんが、お菓子のサイズを工夫することで、より健康的に間食を楽しめるかもしれません。
参考文献
Size of salty snack influences eating behavior that determines amount consumed
https://www.psu.edu/news/research/story/size-salty-snack-influences-eating-behavior-determines-amount-consumed/
元論文
Unit size influences ad libitum intake in a snacking context via eating rate
https://doi.org/10.1016/j.appet.2024.107300
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。