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また、日本ではこれまでに3種類のマリモが見つかっています。
1つ目は「マリモ(学名:Aegagropila linnaei)」で、産地は北海道の阿寒湖や富士五湖、琵琶湖などです。
最大で30センチ幅の球状型を形成し、表面はフェルト状で硬くゴワゴワとしています。
2つ目は「タテヤママリモ(学名:Aegagropilopsis moravica)」で、産地は北海道〜九州の間の約8カ所です。
最大3センチ幅と小さく、見た目は平べったい形をしており、質感はモフモフとした柔らかい手触りとなっています。
そして3つ目が「モトスマリモ(学名:Aegagropilopsis clavuligera)」です。
ただこの種は日本国内の自然な環境では未発見であり、2022年に山梨県甲府にある民家の水槽で初めて確認されました。
最大幅は5センチで、丸くフワフワとした形をしています。
モトスマリモは世界全体で見ても、オランダの熱帯水族館と中国の河川の2件でしか見つかっていない極めて珍しいマリモです。
そして今回報告されたのは、その日本国内で2例目となるモトスマリモの発見であり、やはり民家の水槽で見つかったのです。
本調査を行った国立科学博物館の研究チームは、2022年に山梨県の民家でモトスマリモを発見したときと同じチームです。
彼らは甲府の民家の水槽でマリモが見つかったとの連絡を受けて調査を行い、過去に国内で知られていた2種のマリモとは遺伝的に異なることを特定。
そしてオランダの水族館で見つかった種(Aegagropilopsis clavuligera)と遺伝子がほぼ一致することから、「モトスマリモ」という和名を付けました。
そして今回、同チームは新たに「神奈川県の川崎市にある民家の水槽でマリモが発生した」との連絡を受け、調査を開始。
その結果、国内で2例目となるモトスマリモであることが判明したのです。
ここで見つかったモトスマリモは、コリドラスという熱帯魚を飼育していた水槽内で発生していました。
水槽内にいるモトスマリモ以外の生物は、飼育主がペットショップで購入した一般的に流通している生物です。
飼育主によると、「約3年前に多摩川の河川敷から石を拾い水槽に入れたところ、マリモ状の藻類が石の上にモコモコと発生してきた」という。
この状況から、多摩川の石にモトスマリモの元となる糸状の個体が付着していた可能性が高いと予想されています。
研究チームはモトスマリモの由来を明らかにするために、2023年から富士五湖(山梨県側の富士山麓に位置する5つの湖の総称)で調査を続けていますが、いまだに野生のモトスマリモは見つかっていません。
モトスマリモは主に水族館や水槽内で見つかっていることから、人工環境下で形成しやすい特徴を備えていると推定されてます。
また自然環境下では、飼育下で見られるように丸くならず、石面上に糸状体としてくっついているため、見過ごされているのかもしれません。
チームは今回の発見を機に、日本各地で同じように飼育下でのモトスマリモの発見例が増えることを期待しています。
発見例が増えれば増えるほど、モトスマリモの由来や詳しい生態を明らかにできるはずです。
自宅の水槽に「マリモみたいな藻の固まりができた」という方は、モトスマリモか、また別の新種の可能性もあるので、詳しい人に相談してみると意外な発見につながるかもしれません。
参考文献
ふたたび見つかった民家の水槽だけで発生するモトスマリモ(PDF)
https://www.kahaku.go.jp/procedure/press/pdf/1328460.pdf
日本では3種目のマリモ類の発見!モトスマリモと命名(PDF:2022)
https://www.kahaku.go.jp/procedure/press/pdf/985331.pdf
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。