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例えば、イカやタコなどの頭足類はその良い例です。
彼らは、多くの動物のように「頭→胴体→腕(足)」という順番ではなく、「胴体→頭→腕(足)」という順番で体が構成されています。
一見頭部のように見える円錐状・袋状の「外套膜(がいとうまく)」は、実は内臓が入った胴体であり、頭部はその下の目が付いた部分なのです。
これぐらいなら、まだ頭部だけのサイズを測ることもできそうですが、深海性のタコの1属である「ジュウモンジダコ属(学名:Grimpoteuthis)」などは、すべてが一体化しているようにも思えます。
見た目だけでは判断に苦しみますね。
それでも、「体に比べて最も頭が大きな動物は?」という疑問の答えは、昆虫が持っている可能性が高いと言えます。
アメリカ・イリノイ州のフィールド自然史博物館に務めるブルーノ・デ・メデイロス氏は、1つの候補を挙げました。
その動物は、南アフリカに生息する甲虫「Antliarhinus zamiae」です。
この甲虫のオスは、全長1cmほどで、特に大きな特徴を持たないように思えます。
しかし、メスのAntliarhinus zamiaeは、非常に長い鼻を持っています。
胴体のサイズが1cmなのに対し、頭部からは2cmにもなる鼻が伸びているのです。
比率としては、「頭部:全長 = 2:3」になりますね。体の大部分が頭部に該当するのです。
この鼻は、正確には「吻(ふん)」と呼ばれ、動物の体において、口やその周辺が前方へ突出している部分を指す用語となっています。
吻の役割は動物群によって様々です。
Antliarhinus zamiaeにおいては、吻に目と触角が含まれており、吻の先端には大あご(口器)があります。
吻の付け根にある筋肉によって、その大あごが制御されており、Antliarhinus zamiaeのメスは、これを使って種子を食べたり、植物に穴をあけて卵を産み付けたりします。
そしてAntliarhinus zamiaeは、「最も長い鼻を持つ甲虫」として、ギネス世界記録に認定されています。
Antliarhinus zamiaeの鼻または吻は、頭部から伸びており、その機能なども考慮すると、頭の一部だと言えるでしょう。
そのため、体に比べて最も頭が大きい動物は、Antliarhinus zamiaeだと言えるかもしれません。
またメデイロス氏は、他の候補として、ハエの一種である「Teleopsis dalmanni」を挙げました。
このハエは、眼柄(がんぺい)と呼ばれる頭部とは離れた眼を持っており、この構造ゆえ、頭の幅が広くなります。
メデイロス氏によると、頭の幅が体長の2倍になる個体も存在するようです。
そしてTeleopsis dalmanniのオスは、他のオスとの競争において、この離れた眼を「自分の体を相手よりも大きく見せる」のに役立てているようです。
ちなみに、比率ではなく、単純に頭のサイズだけで考えると、最も大きな頭を持つ動物には、世界最大の動物「シロナガスクジラ(学名:Balaenoptera musculus)」が挙げられそうです。
一般的な体長は20~26mだと言われており、これまでに確認された最大の個体は、約30mにもなります。
彼らは当然大きな頭部を持っており、そのサイズは5.5mだと言われています。比率としては、「頭部:全長 = 1:5」になります。
また、体に比べて頭が大きな動物が分かると、その逆の存在も気になるものです。
メデイロス氏はその答えを挙げていませんが、「最も小顔な動物」には、首の長い動物たちが候補に挙がりそうです。
例えば、キリンなどは、胴体に比べて非常に小さな頭を持っています。
キリンは12頭身とも言われることがあり、その場合の比率は「頭部:全長 = 1:12」になりますね。
また恐竜を含めるなら、首の長いブラキオサウルスなども候補に挙がることでしょう。
彼らは頭が小さいからこそ、長い首の先端に頭部が付いていても重くなり過ぎず、自由に頭を振ることができるのです。
そして頭のサイズを活用しているのは、小顔な動物だけではありません。
頭の比率が大きな動物たちも、その大きな頭部(もしくはその一部)を競争や摂食、また繁殖に役立てています。
動物たちは、頭のサイズと比率は非常にバリエーションに富んでいますが、それは彼らの生存戦力と結びついています。
頭の比率に目を向け、なぜ頭がそんなサイズになったのかということを考えてみるのも、生物を観察するときの一つの楽しみになるかもしれません。
参考文献
Which animal has the largest head?
https://www.livescience.com/which-animal-largest-head-relative-to-body
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。