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表情の種類は、嫌悪、怒り、恐れ、驚き、悲しみ、無表情そして幸福(笑顔)がありました。
実験の結果、怒りや恐れなどネガティブな表情は魅力が低く、幸福(笑顔)のポジティブな表情は魅力度が高い傾向があるように見えますが、どの表情であっても魅力度は一定していることが分かりました。
つまり笑顔であろうが怒っていようが、顔が良い人は魅力度が高く、顔が悪い人は魅力度が低く評価されたのです。
研究チームは「生まれ持った顔を変えるのは難しい。そのゆえ私たちは、どんな表情を相手がしていようが、その人の魅力度を安定して評価できる」と述べています。
しかしどうして私たちは笑顔が魅力や若さなどのプラスの価値観と結びついているのでしょうか。
イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学のツヴィ・ガネル氏(Tzvi Ganel)らの研究チームは笑顔にプラスの価値観を強く結びつけている事実に関して次のように述べています。
「スキンケア用品や歯磨き粉などを販売している会社のCMを思い出してもらいたい。これらの会社は笑顔が若さや魅力などのプラスの価値観と結びついていることを上手く活用している」
彼らは笑顔が若く見えるという考えが、企業のCMによって強調されることで、信念として深く根差すようになったのではと仮説立て実験を行いました。
つまり本来笑顔は老けて見えるにもかかわらず、若く見えると信じているかもしれないと考えたのです。
実験に参加したのは大学生42名です。
参加者は無表情、笑顔、驚いた顔の3つのパターンがある男女60名の顔画像の年齢の推定してもらいました。
また評価の最後にはそれぞれ見た表情の顔を思い出し、その平均年齢はどれくらいであったかも回答してもらいました。
実験の結果、無表情の顔と比較して、笑顔は約1歳年齢が高く、驚いた顔は約1歳年齢が低く評価されたのです。
しかしすべての顔を観察した後に思い出し行った評価では、無表情の顔と驚いた顔の推定された年齢には差はなく、笑顔が他の表情と比較して約2歳若いと回答しました。
直接的な評価と回顧的な評価に差が生じたのは、後からの年齢の推定には「笑顔は魅力的で、若く見える」という信念が影響を与えたからだと考えられます。
研究チームは「今回の研究で印象的だったのは、参加者が笑顔の表情は周りから若く見られるだろうという認識を持っていたことである。また彼らは笑顔が老けて見られることに気づいていなかった。
直観に反するかもしれないが、多くの人が持っている信念とは異なる印象を実際には抱いている可能性を示した」と述べています。
ではなぜ笑顔は無表情、驚いた顔と比較して老けて見られるのでしょうか。
それは目の周りや頬の皺の数や強度が笑顔の場合には増加し、驚いた顔の場合には限生じたからだと考えられています。
年齢の見積もりが顔の皺の数と強度によって決められるのであれば、悲しみの顔は眉間に、怒り顔は鼻にシワが生じるので、驚きの顔や無表情の顔よりも老いて見えるのかもしれません。
また笑顔が無表情よりも老けて見えるのは、若い人ほど効果が強いようです。
ガネル氏は後続の研究で、年齢層によってこの現象が変わるのかを検討しており、年齢が高い人においては生じないことを報告しています。
これは高齢層は無表情時にすでに皺の数が多くあり、若年層は無表情時に皺が少ないからでしょう。
これらの結果から考えると、写真を取るときの表情は口角を少し上げるような穏やかな笑顔のほうが周りから若く見られ、印象が良くなるかもしれません。
参考文献
Western study finds fault in common belief that smiling makes you appear younger
https://globalnews.ca/news/3438740/western-study-finds-fault-in-common-belief-that-smiling-makes-you-appear-younger/
Smile and the World Thinks You’re Older
https://neurosciencenews.com/smiling-older-perception-6625/
Smile and the world thinks you’re older
https://www.sciencedaily.com/releases/2017/05/170509132835.htm
元論文
The effects of smiling on perceived age defy belief
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28484949/
Smiling makes you look older, even when you wear a mask: the effect of face masks on age perception
https://cognitiveresearchjournal.springeropen.com/articles/10.1186/s41235-022-00432-3
The effect of smiling on the perceived age of male and female faces across the lifespan
https://www.semanticscholar.org/paper/The-effect-of-smiling-on-the-perceived-age-of-male-Ganel-Goodale/e819c600866ff860ff8afad95af3cb69ae448a60
The Stability of Facial Attractiveness: Is It What You’ve Got or What You Do with It?
https://www.researchgate.net/publication/257593030_The_Stability_of_Facial_Attractiveness_Is_It_What_You%27ve_Got_or_What_You_Do_with_It
ライター
AK: 大阪府生まれ。大学院では実験心理学を専攻し、錯視の研究をしています。海外の心理学・脳科学の論文を読むのが好きで、本サイトでは心理学の記事を投稿していきます。趣味はプログラムを書くことで,最近は身の回りの作業を自動化してます。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。