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硝酸塩は地球上の生物の多くが生命活動に利用している窒素化合物です。
細胞を作るアミノ酸やタンパク質の材料となるもので、植物は地中の硝酸塩などの窒素化合物と炭水化物を組み合わせてアミノ酸を作っています。
硝酸塩は植物の肥料としても与えられるくらい植物の成長を促す成分であり、硝酸塩を大量に生み出す雷も植物の成長を促します。
雷の別名である「いなづま」は漢字で「稲の妻」と書きますが、これは雷雨の後は稲穂の実りがよくなったことが由来だと言われています。
無機物である硝酸塩ですが、生命を作り育てるのには不可欠な成分なのです。
ただし、生命の誕生には硝酸塩だけでなくアミノ酸からタンパク質になる過程も重要です。
実は、アミノ酸がタンパク質になる過程も硝酸塩が火山雷に由来しているのと同様に火山活動が関係した可能性が指摘されています。
アミノ酸はペプチド結合することでタンパク質になります。
このペプチド結合はアミノ酸の形では起こりにくく、アミノ酸の酸素原子を硫黄原子に置換したものと酸化鉄が溶液中で混ざると起こりやすくなることが、大阪大学の研究で明らかになりました。
火山ガスは硫化水素が含まれることからこの硫化水素の硫黄原子がタンパク質の誕生に寄与していた可能性があります。
また火山灰にも酸化鉄が含まれているため、噴火時はペプチド結合が起こりやすい条件が整っています。
火山噴火によって生じた火山雷で硝酸塩が生じ、その硝酸塩からできたアミノ酸が火山ガスと火山灰の影響でペプチド結合し、タンパク質となった可能性があるのです。
生命の誕生の解明には、硝酸塩からどうやってアミノ酸が生まれたか、つまり有機物がどのように生まれたかも重要です。
有機物は大気中の二酸化炭素と水素から生まれたと考えられていますが、これらが有機物となるには鉱物などの触媒が必要となります。
これらの触媒も火山灰に含まれる成分が担えるという説もあります。
知れば知るほど、火山の噴火には生命が生まれる条件がそろっています。
生命の起源は本当に火山にあるのかもしれませんね。
参考文献
生命の起源-地球上にポリペプチドが出現したルートの解明にもつながる成果
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2019/20190517_2
元論文
Geological evidence of extensive N-fixation by volcanic lightning during very large explosive eruptions
https://doi.org/10.1073/pnas.2309131121
Regioselective α-Peptide Bond Formation Through the Oxidation of Amino Thioacids
https://doi.org/10.1021/acs.biochem.8b01239
ライター
いわさきはるか: 生き物大好きな理系ライター。文鳥、ウズラ、熱帯魚などたくさんの生き物に囲まれて幼少期を過ごし、大学時代はウサギを飼育。大学院までごはんの研究をしていた食いしん坊です。3人の子供と猫に囲まれながら、生き物・教育・料理などについて執筆中。
編集者
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。