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例えば、チェコの首都プラハには、「ダンシング・ハウス」と呼ばれるねじれた建物があります。
まるで「抱きかかえる男性」と「体をしならせる女性」のカップルがダンスを踊っているかのようです。
またスペインのビルバオには、魚の鱗を無造作に張り付けたような「ビルバオ・グッゲンハイム美術館」があります。
こちらも奇抜な建物ですが、人々からの評価は高く、「最高の建築物」とさえ呼ばれてきました。
このように世界の建築家たちは、自分の創造力を振り絞り、「世界で唯一のデザイン」を残してきたのです。
ドイツ生まれの建築家オーレ・シェーレン氏が率いる建築事務所「Büro Ole Scheeren」もまた、奇妙でユニークな建築物を考案してきました。
例えば、中国の海南島では、「Sanya Horizon」という名の建築物のプロジェクトが2022年から始まっています。(2026年完成予定)
やや湾曲した横長のブロックを水平に積み重ねたデザインであり、内部には植物が植えられプールも設置される予定です。
そして最近、Büro Ole Scheerenは新たなプロジェクトを発表しました。
彼らが計画しているのは、4つのねじれたビルで構成される「Tencent Helix」という建築物です。
この奇抜なデザインは、中国深センにある大手テクノロジー企業「テンセント」の新しい本社を決定する国際コンペで勝ち抜き、見事採用されました。
床面積は約50万m2であり、これはカリフォルニア州にあるアップル本社「Apple Park」の約2倍の広さです。
また4つのタワーは、それぞれ高さが異なるものの、最も高いもので153mに達するようです。
ビルの外装は透明なガラスパネルで構成されており、日光が内部まで行き渡るよう設計されています。
さらにビルの中心部は中庭になっており、様々な植物が配置されるだけでなく、螺旋の隙間から新鮮な空気が流入するようになっています。
Büro Ole Scheerenによると、特徴的な「ねじれデザイン」は、創造性とテクノロジーの融合や、テンセント社の急成長を表現しているようです。
この新しい建築物「Tencent Helix」のプロジェクトが、今後どのように進んでいくかは明らかにされていません。
それでも、テンセント社の設立30周年となる2028年までには、完成を間に合わせたいはずです。
ちなみに2016年には、中国国務院が「奇抜な建物や、不規則な形状の建物の建築を禁止する」と発表し、話題になりました。
この指針に、どのような基準や、どの程度の拘束力があるのかは分かりませんが、プロジェクトが進んでいるということは、今回のTencent Helixは該当しないのでしょう。
デザインにおいて「奇抜である」ことと「卓越している」ことを見分けるのは簡単ではありませんが、今後も中国ではユニークな形状の建物が作られていくのかもしれません。
参考文献
Twisting four-tower Tencent HQ forms a vortex in Shenzhen
https://newatlas.com/architecture/tencent-helix/
Büro Ole Scheeren
https://buro-os.com/home
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。