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トリュフの魅力はその香りにありますが、白トリュフの方が黒トリュフよりも香りが強く、新鮮なものを生でパスタやオムレツなどにスライスして食べることが多いです。
一方、黒トリュフはどちらかというと加熱調理に向いており、スライスしてふりかける以外にも、ソースやオイルとして利用されます。
白トリュフは黒トリュフに比べて産地が限られており、生産量も少ないため、その希少性からより高価です。
とはいえ、黒トリュフであっても「黒いダイヤ」と呼ばれるほど希少であり、不作によって価格が急騰することがあります。
例えば、2012年、2017年には雨不足で黒トリュフが不作となり、「世界の美食家たちを泣かせた」と話題になりました。
また今年2023年も黒トリュフは不作であり、卸価格が大きく上昇しただけでなく、品質も高くありませんでした。
日本でもトリュフの需要は高まっており、2022年の輸入額は約20億円にものぼったと言われています。
こうした中で、国産のトリュフの栽培技術の確立は大いに望まれてきました。
トリュフは生きた樹木の根に共生して増殖する「菌根菌」に属しており、マツタケと同様、人工栽培が非常に難しいキノコです。
人工的にトリュフを発生させるには、樹木との水分やミネラルのやり取り、土壌の環境といった共生関係のメカニズムを解明し、それを完璧に再現する必要があるのです。
海外では、樹木の根にトリュフ菌を共生させた苗木を植栽することで、すでにトリュフの人工発生が可能になっていましたが、日本国内でのトリュフの人口栽培は実現されていませんでした。
それでも2022年11月には、日本でも、国産の白トリュフである「ホンセイヨウショウロ」をコナラ苗木に共生させ、人工的に発生させることに成功しています。
一足先に、より希少な白トリュフの発生に成功したわけですが、この度、黒トリュフの発生にも成功したと報告が上がりました。
2016年4月と7月に国産黒トリュフである「アジアクロセイヨウショウロ」の菌を摂取したコナラ苗木を野外に植栽したところ、7年目の2023年10月に、地表面に2個のトリュフが発生しているのを確認できたのです。
このトリュフを遺伝情報に基づいて分析したところ、間違いなく黒トリュフ「アジアクロセイヨウショウロ」であると証明されました。
白トリュフに続き、「国内で初めて人工的に国産黒トリュフを発生させることに成功した」と言えます。
研究チームは今後、キノコ発生の再現性を確認するとともに、短期間で安定的に発生させる技術開発を進めていく予定です。
この技術が確立されるなら、国産の白トリュフと黒トリュフが流通することになるでしょう。
そうなれば、日本でもより多くの人が世界三大珍味の1つを楽しめるはずです。
参考文献
国産の黒トリュフを人工的に発生させることに成功しました
https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2023/20231204/index.html
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。